抗肥満薬のOTC化、どう思う?
調剤室で生まれた「ベン」「ゼン」「カン」の三兄弟。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘するベンゼン三兄弟が、薬剤師に聞いた実態調査をレポートします。
大正製薬株式会社が承認を取得した「アライ」は、脂肪吸収阻害作用をもつオルリスタットを有効成分とした内蔵脂肪減少薬です。
オルリスタットは消化管の管腔内で脂肪分解酵素であるリパーゼの活性を阻害することで、食事由来の脂質の吸収を抑制。そのため「アライ」の服用とあわせて食事や運動などの生活習慣の改善を行うことで内蔵脂肪が減少し、腹囲の減少へ導くことが期待されています。
米国や欧州など100以上の国でオルリスタット120mgカプセル、米国、欧州など70以上の国でオルリスタット60mgカプセルがOTCとして承認されていますが、日本では医療用医薬品およびOTCのいずれにおいても初めての成分となります。
そこでm3.com薬剤師会員の皆さんに、抗肥満薬のOTC化についてうかがったところ「良いと思う」30%、「問題あると思う」14%と回答。賛成意見がある一方で、一定数の反対意見があることが分かりました。また薬局での取り扱いに関しては、販売したいと「思う」25%、「思わない」31%となり、「取り扱いが面倒、効果がなかった時のクレームが怖い」など販売については慎重に検討したいと考えているという意見もありました。
しかし販売が開始された場合の患者さんへの情報提供や指導に対しては、「どちらかと言えばできる」42%であり、抗肥満薬の薬局での取扱いの有無に関わらず、問い合わせについてはしっかり対応したいという意向がうかがえました。その他、今後OTC化した方がよい薬やその理由を含め、貴重な意見が寄せられています。
Q1:抗肥満薬のOTC化について、先生のお考えに一番近いものを選択して下さい。
ベン:
問題があると考えている方が一定数いるね
Q2:Q1と回答された理由を教えてください。
とても問題あると思う / 問題あると思う
- 副作用が起きたときの対応ができない。安易に薬を飲む人が出てくる
- 自己判断で使用すべき薬剤ではないと思う
- 肥満に対する薬物治療は必要ない
- 日常生活に支障がある副作用が報道されていない
- 他の疾患のOTCについては割と賛成ですが、抗肥満薬については、拒食症、過食症のような服用することが不適切な方も服用できる問題点がある
- 社会的なニーズはあるかもしれないがダイエットや美容目的に使われることは明らかで、そもそも薬に頼らなければならないほどの肥満なら医師の診察を受けるべき。OTCにそぐわない
- 都合の良い情報のみを都合よく解釈して使用する可能性がある。また正しい情報を薬剤師に伝えるとは限らないので、薬剤師には高い情報取得能力が求められる
- 腹囲85-90センチ以上の基礎疾患がない日本人がどれほどいるのか?基礎疾患がないことを確認する(法定健診の結果)には限界がある
- シンデレラ体型を求めて若年層の服用が増える可能性があるため。若年層の痩せすぎは将来の骨粗鬆症や生理不順など問題があるため自由に購入出来るのは問題と考える
- 肥満者の問題に対して根本解決になっていない
とても良いと思う / 良いと思う
- 努力で痩せられないこともあるから
- 糖尿病の薬をダイエット目的で使われるよりはいい
- 医薬品の販売の幅がひろがるため
- 危険な無許可の輸入薬を服用するよりずっと安全だから
- 保険診療への依存傾向を変えられる可能性あるため。漢方は品薄、美容目的での糖尿病薬相談など減ると期待
- 要指導医薬品であれば良いと思う
- 本来は医療用医薬品であるべきだが、一部の美容クリニックなどでは医療用医薬品をダイエット目的とした不適切処方が散見される。オルリスタットにはその抑止効果を期待
- 病院診察で防風通聖散を肥満予防でもらう人たちはOTCを買うべき
- 医療費抑制につながる、薬剤師でも十分対応可能な分野
- 医師はより専門性の高い疾患治療にあたるべき
- 現代人は医療に対して全体的に受け身。公園にはいつも運動をしている人がいる世の中で会って欲しい
- セルフメディケーションの意識が高まる
- 将来の生活習慣病予防に期待したい
- 薬剤師の業務の幅が広がる。健康サポートの役割を担うことができる
どちらでもない
- 肥満は食事、運動、睡眠をしっかり自己管理を行うことが必要。医薬品は補助役であることを伝え、服薬すれば効果有りとすすめることに問題
- GLP−1みたいなのを美容整形で出すよりずっと安全
- OTC化されると、不適切な使用を避けるのが困難と思われる
- 体質が変わったりするわけでないので、継続服用するよりかは生活食事習慣を見直してもらう方が有益なのでは?と思う
- 日本人は薬の服用に関する教育が欧米や韓国に比べて遅れているように思う。服薬や病気に関する教育が必要
- 日本人の食生活から、肉類などよりコメ類の炭水化物摂取、糖質摂取が多い場合での効果がわからない
- 必要ないのに希望される人に上手く説明して気分良く信頼壊さず納得できる説明ができるか不安
- 抗肥満薬というカテゴリーのネーミングがよくない。こんなネーミングなら誰もが欲しくなる
- 肥満は本人の意思の弱さによるもので、健康なら薬に頼らなくても良いのでは。チェックシートをすり抜けて(太った人に代理購入してもらうとか)服用する女子が増えそう
OTC販売の経験(店長経験あり)から考えると、OTC薬として注目はされると思うが、陳列を大々的にやるとは思わない。陳列を大々的にやらないなら消費者が見つけられないので購入される個数は多くないと考える
Q3:OTC化された抗肥満薬を販売したいと思いますか?
ゼン:
販売については慎重な意見が多かったぜ
Q4:Q3と回答された理由を教えてください。
思う
- 選択肢がひろがる
- 下手なサプリメントより安全だと思う
- 薬剤師としてのアドバイスが出来るのなら。注意喚起を出来る薬局でありたい
- 薬剤師の腕の見せ所
- 需要があると思う
- 美容やダイエットの相談をよくされるから
- コロナ禍で薬局収入が下がったから
- やはり、個人の責任においての話
- 予防医療は大切。また、収益にもなる
- 漢方薬を使用していますがその効果の低さに不満が大きい
- 生活習慣病の予防に貢献していきたい
- 健康を自身で守れる人であって欲しい
- 医療費の抑制にも繋がり社会貢献できる
- 自分も飲んでみたい
思わない
- 取り扱いが面倒、効果がなかった時のクレームが怖い
- 本当の肥満者は、食生活に無関心
- OTC化されて競って購入する人は、痩せている人だと思う
- 適切に販売するのが、難しそうだから
- 薬だけ服薬して痩せられるとは限らない
- 受診すべき
- 対応する時間がない
- 処方箋薬のほうが扱いやすい
- 必要性が感じられない
- 薬に頼らない食生活や運動の重要性を力説すると思う
- 自信をもってすすめることに躊躇する
- 売れないと思う
- 虚偽の申告による健康被害について責任を負いかねる
- 販売自体に否定的な考えのため
- 肥満症は医師の診断が必要
- 期限切れになりそう。受注発注なら扱ってもいい
わからない
- 生活習慣を見直す方が先だと思う
- 田舎の老人対象のクリニックの門前で、対象患者が見込めない
- 効果と販売額が予測できない
- 安全性・適正使用の問題点に関するリスク・ベネフィットが勉強不足のため
- 自分で使用して効果があれば販売する
- 日本人への投与の安全性が確認されなければ販売したくない
- 有効性 危険性のエビデンスがもう少し明確になってから
Q5:抗肥満薬がOTC化され販売が開始された場合、患者さんに適切な情報提供や指導をできると思いますか?
カン:
薬剤師として適切な情報を伝えていきたいという意向が分かったね
Q6:今後、様々な薬のOTC化が進む可能性がありますが、OTC化した方がよい薬の例があれば理由と一緒に教えてください。
内服薬
- 降圧剤:統計的にも罹患者は多い。OTCでは、コントロールできなければ、受診勧告すればいい。
- 糖尿病薬(劇薬以外)、脂質異常症治療薬、血圧降下薬(劇薬以外)、生活習慣病改善薬:緊急性が高くないため薬局でもフォローアップしやすいと思われる
- DPP4阻害薬、ARB、ウィークなスタチン、長期収載品から眩暈薬など多数
- 緊急避妊薬:緊急性が高く、早く服用する事で効果を高くすることができるから
- 帯状疱疹、ヘルペス:副作用が少なく、早めの内服が奏功する
- ポリアクリル樹脂経口薬:海外ではOTC、安全性も高い
- 花粉症の薬:患者自身が症状を判断できるため
- 風邪薬(タミフル等インフルエンザの自己による確定診断が可能なもの):検査キットの販売により簡易診断ができる
- 神経性疼痛治療薬:自己管理可能
- メラトニン作動薬:寝られない方は多い
- 鉄剤:市販の薬は弱すぎる
- 小児用風邪薬:薬をもらいに行くためだけの受診が減る
- ED治療薬
- α-GI関連:イレウス等の副作用に注意すればそこまでハイリスクではない
- 吐き気止め:緊急性が非常に高いため。
- 漢方薬の全部:不必要なのに服用している患者さんが多い
- ビタミン剤:薬価削除してOTC化してほしい
- 抗生物質や帯状疱疹の抗ウイルス薬:ただし研修など受けた薬剤師が対面販売
- ニキビ治療薬:ニキビひとつできたからと受診する子供がいるが、不要
点眼薬・点鼻薬
- ステロイド点眼剤:目の痒みにはよく効くが危険性は特段高くないと思われるため
- タリビット点耳薬:待ち時間の長い耳鼻科に行かなくても良い
- 白内障進行抑制点眼:コロナで待ち時間を気にしている人や、定期的に受診ができず中断しているケースを知っているため
- アレルギー点鼻薬、点眼薬:副作用もほとんどなしなのでもっとOTC化してほしい
軟膏
- ヒルドイドソフト:OTCを購入してほしい
- アズノール軟膏:OTCでない理由がわからない。アズノールを処方してもらうだけに受診する意味も分からない
外用薬・座薬
- 全ての外用消炎鎮痛剤(ジクトル、ロコアは除く):保険診療する意味がないので完全に医療用から削除したらよいと思う
- NSAIDsの湿布、パップ、テープなど:保険から切り、OTCでよい
- ダイアップ:熱性けいれん、突発的のため
その他
- 栄養状態がわかる検査値の簡易検査薬:サルコペニア、フレイル対策に保険を使うべきでないと考える
- エピペンの2回目以降の購入:マイナンバー紐付け必要
OTC化に関する意見
- 昨今、オーバードーズ等、患者の不適切な使用が認められる。言わば患者の問題の方が大きい。患者の自由意志に任せるのではなく、医師の診察後に処方で出した方が良い
- 一律に薬剤師免許を持っていれば販売できるのはおかしい。eラーニングや講習会、確認試験を経て販売できるようにすれば、もっと多くの薬剤をOTC化できるはず
- 配合剤にせず単剤のOTCをメインにしてほしい。解熱鎮痛咳止め抗ヒスタミンなど
- もっとセルフメディケーションが進むべき
- 規制緩和は危険であると思う
- コロナを含め検査薬(検査キット)など自身で検査して、医療機関に受診する。万が一間違ったら自身の責任があると思う様な世の中であって欲しい
ベン:
抗肥満薬についての貴重な意見が聞けたね
ゼン:
食生活の見直しや運動も必要だぜ
カン:
安全性を見極めて、自己管理をする必要がありそうね
ベンゼン三兄弟
ベン・ゼン・カンの三兄弟。調剤室で生まれ、日々がんばる薬剤師を見て育ってきた。薬剤師に元気を届けながら、自分たちもいつか薬剤師になる日を夢見ている。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘中♪
《 ベン 》
正義感の強い三兄弟のリーダー。勉強熱心でいろいろなことに興味津々。
熱中するとまわりが見えなくなりがち。
《 ゼン 》
明るくてポジティブな三兄弟のムードメーカー。
調子にのりやすく失敗もするが、立ち直りも早い。
《 カン 》
優しくて気配りのできる三兄弟の癒やし系。控えめだけど実はしっかり者。
なぜかゼンへのツッコミは厳しい。
ベンゼン三兄弟のLINEスタンプ販売中
ベンゼン三兄弟のLINEスタンプ販売中
スタンプ購入はこちら