院内肺炎(HAP)総論とエンペリックテラピー1
今回は、難しい内容となりますが、どうしても論じないわけにいかない院内肺炎(HAP:Hospital-acquired pneumonia)についてまとめていきたいと思います。
院内肺炎とは、入院から48時間以降に新たに発症した肺炎と定義され、基礎疾患や免疫能の低下を持つ患者さんが多いことからも、治療が極めて困難になることが多くなる肺炎です。その中でも人工呼吸器関連肺炎(VAP:Ventilator-associated pneumonia)は、気管挿入後48時間以内に新たに発症した肺炎を示すが、よりシビアな抗菌薬選択が必要と言われています。
院内肺炎の治療の原則は、適切な抗菌薬の早期投与ですので、肺炎を疑った場合には、直ちに適切な培養検体(喀痰培養や血液培養など)を提出し、抗菌薬を十分量投与する必要があります。中でも喀痰培養のグラム染色にて起炎菌を推測できるかは必要に大切である一方、施設によって上記が施行できるかには差があると思います。グラム染色が可能だとしても、見える菌の多くが定着菌である可能性も高く、好中球貪食像の有無などを参考に起炎菌を絞っていく必要性が出てきます。