第104回の傾向② 超難問にチャレンジ
前回は、第104回国試の「科目をまたいだ出題」として理論問題の「薬理と治療の連問」を見ていただきましたが、今回は、受験生の正答率※が10%を下回った超難問にチャレンジしてみてください。
薬学ゼミナールの調査では、化学の医薬品の開発からの出題、病態生理・薬物治療の症候(腹痛)について問う出題などが正答率10%以下でした。特に症候についての問題は臨床薬剤師の方々のほうが日常業務で修得する知識として解答が導けるかも知れません。
- 腹痛は、神経痛と体性痛の2つに分類される。
- 腹膜刺激によって起こる痛みは、体性痛である。
- 腹部全体に痛みがある腸重積症は、急性腹症である。
- 右下腹部痛及び発熱があると、胃食道逆流症が疑われる。
- 左側腹部痛、発熱、黄疸があると、胆嚢炎が疑われる。
コカインはその塩酸塩が表面麻酔薬として用いられる。コカイン塩酸塩は麻薬及び向精神薬取締法において麻薬に指定されていることなどから、p -アミノ安息香酸エステル誘導体であるプロカイン塩酸塩(選択肢4)などが開発された。
コカインはトロパン骨格を有していますので、薬学生の多く(85%)は、選択肢2(ホマトロピン臭化水素酸塩)のトロパン骨格をみて解答を2と選択してしまいました。正解は選択肢4のプロカイン塩酸塩で、コカインとステムが同じこともヒントとなります。コカインからプロカインの創出については、改訂コアカリで「近代の薬物療法の発展」として法規・制度・倫理でも学ばれています。
選択肢1は、腹痛は発生機序により主に体性痛、内臓痛、関連痛の3つに分類されるため「誤」の記述です。選択肢4は、胃食道逆流症は胸焼け、呑酸などの逆流症状を呈する疾患であり、右下腹部痛および発熱が生じる疾患は、クローン病や虫垂炎などであるため「誤」の記述です。選択肢5は、胆嚢炎で生じる痛みは、主に右季肋部痛であるため「誤」の記述です。
症候についての出題は近年増えていますが、「腹痛」については初出題となり、選択肢2および3を解答できた薬学生はそれぞれ45%、26%でした。一方、間違った内容である選択肢1および5を解答してしまった薬学生はそれぞれ72%、53%でした。病院のベッドサイドや薬局の店頭で患者さんの症状を伺い、緊急性を判断するためには、もう少し症候についての知識の修得が求められそうです。
※薬学ゼミナール自己採点システムによるデータ(12,555名参加)より