第104回の傾向① 科目をまたいだ出題
合格率は70.91%で、前回より0.33ポイント上昇した第104回薬剤師国家試験。新卒合格率は前回を上回ったものの、既卒合格率は43.07%と、前回より3.93ポイント下回りました。
全体として、必須問題は「平易~やや平易」、理論問題は「やや難」、実践問題は「中等~やや難」と総評を発表した薬学ゼミナールの講師 村上 理先生に、現役薬剤師の方にもぜひ力試ししてほしい問題を選出&解説いただきました。
血中の甲状腺ホルモン値、カテコールアミン値、ACTH値には異常を認めず、腹部CT検査にて両側副腎の腫大を認めた。本症例に対する治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
- プレドニゾロン
- スピロノラクトン
- アムロジピン
- フロセミド
- ニトログリセリ
- ドパミンD2受容体
- グルココルチコイド受容体
- アンドロゲン受容体
- アルドステロン受容体
- プロゲステロン受容体
本患者の血圧が180/110mmHgと高値を示していることや血清カリウム値が3.0mEq/Lと低値を示していること、腹部CTにて副腎の腫大を認めていることより、アルドステロン症の可能性が高い。アルドステロン症では、アルドステロン分泌が亢進することにより、Na+の再吸収とK+の排泄が促進し、高血圧、低カリウム血症などを生じる。
アルドステロン症の降圧には、アルドステロン拮抗作用のあるスピロノラクトンやCa2+チャネル遮断薬であるアムロジピンなどが用いられる。
スピロノラクトンは、アンドロゲン受容体とプロゲステロン受容体への結合を介して、女性化乳房を起こすと考えられている。
問2では、受験生の多く(60%以上)が選択肢4(アルドステロン受容体)を正解として選んでいます。
降圧作用はアルドステロン拮抗作用により発現していますが、副作用である女性化乳房は、アンドロゲン受容体とプロゲステロン受容体への結合を介して発現しています。薬剤師の皆さんは、アルドステロン拮抗作用を有し、アンドロゲン受容体とプロゲステロン受容体への結合親和性が低い医薬品としてエプレレノンを思い出せるのではないでしょうか?
※薬学ゼミナール自己採点システムによるデータ(12,555名参加)より
普段の薬剤師業務の中で、医薬品の作用機序からその副作用を推測したり、相互作用を考えたりすることはありますか? 2013年(H25年)12月25日に発信され、2015年(H27年)入学生より適応されている薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂(改訂コアカリ)において、それまで別々の項目で扱われていた「薬理」と「病態・薬物治療」が一つの項目になりました。これらの科目がまとめられた理由として、学生の思考プロセスに沿う形にするためとされています。この思考プロセス(医薬品の作用機序から副作用や相互作用を推測する過程)を修得することで、臨床の場で、医師や看護師等と共にチーム医療として、薬剤師の職能を活かすことができるのではないでしょうか。
実際に改訂コアカリで学修した薬学生が薬剤師国家試験(国試)を受験するのは106回国試からですが、既に最新国試(第104回)の理論問題で「薬理」と「病態・薬物治療」の連問が3連問も出題されています。
他にも最新国試(第104回)では、新生児マススクリーニング(タンデムマス法を用いた脂肪酸代謝異常症の検査)について、「物理:質量分析法」、「化学:補酵素」、「生物:β酸化」、「衛生:栄養療法」の4連問も理論問題で出題されています。科目の壁を越えて知識を繋げる力が求められています。