関節リウマチの合併症管理:薬剤選択で避けるべきリスクと根拠
- 患者背景を踏まえた抗リウマチ薬の安全な選び方
- 妊娠・高齢・臓器障害で変わる服薬管理の視点
- 患者一人ひとりに応じた薬剤師の介入ポイント
その処方、本当に「この患者さん」に合っていますか?
関節リウマチは関節の痛みや腫れだけでなく、「リウマチ肺」と呼ばれる間質性肺疾患など全身性の合併症を引き起こす疾患です。また、関節リウマチ治療薬は有効性が高い一方、患者の年齢、妊娠、臓器障害、悪性腫瘍の既往などにより注意点が大きく異なります。本コラムでは「関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂(以下、ガイドライン2024)」および「ライフステージに応じた関節リウマチ患者支援ガイド」を基に、患者背景に応じた合併症と治療上の留意点について整理し、臨床で役立つポイントを解説します。
関節リウマチと合併症・患者背景を知ろう
関節リウマチの国内有病者数は約80万人とされ、女性比率が高く、30〜50歳代での発症が多いことが特徴です1)。
一方で高齢化が進み、高齢発症関節リウマチ患者や合併症で治療が必要となる患者が増加しています2)。関節リウマチは全身性の炎症を伴うため、心血管疾患のリスクは一般人口の1.48倍上昇し3)、間質性肺疾患は生命予後に影響する因子4)として重要です。
さらに治療薬の高度化に伴い、妊娠・授乳期、腎・肝障害、悪性腫瘍の既往など、多様な背景を持つ患者へ個別化治療を提供する必要性が高まっています1)。
関節リウマチ治療薬と背景別に注意すべき合併症とは?
近年、高齢関節リウマチ患者の増加に伴い、さまざまな合併症や患者背景に注意する必要が出てきました。
背景別にまとめてみましょう。
① 高齢者
高齢者では感染症リスクの増大、腎機能低下、多剤併用(ポリファーマシー)、サルコペニアなどが問題となります。
ガイドライン2024では「安全性に十分配慮し、抗リウマチ薬で寛解を目指すバランス」が重要とされています1)。メトトレキサート(MTX)は腎機能低下により血中濃度が上昇しやすく、腎機能を継続的にフォローすることが重要です5)6)。
生物学的製剤やJAK阻害薬は感染症や帯状疱疹のリスクが高く、ワクチン接種の検討も推奨されています7)8)。
② 妊婦
ガイドライン2024では「妊娠判明後の薬物治療の継続については適宜判断する」こととされています1)。「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと(禁忌)」とされる主な抗リウマチ薬はMTX、ペニシラミン、レフルノミド、イグラチモド、ミゾリビン、JAK阻害薬です。妊娠中に比較的安全性が確認されているのはサラゾスルファピリジン(SASP)およびステロイドです。
また一部のTNF阻害薬(エタネルセプト、セルトリズマブペゴル)は低胎盤移行性が確認されているため、選択肢の一つです9)。TNF阻害薬以外の生物学的製剤としてトシリズマブやアバタセプトは容認されていることも覚えておくといいでしょう1)。妊娠前からの十分な説明と情報提供を行うことが重要です9)。
③ 授乳婦
授乳中に比較的安全とされる薬剤は妊娠期より種類が多く、SASP、タクロリムス、TNF阻害薬は母乳移行が少ないことが知られています10)11)12)13)。 TNF阻害薬以外の生物学的製剤としてトシリズマブやアバタセプトも授乳中の使用が可能です1)。
一方、MTXやJAK阻害薬は授乳中禁忌です1)。生物学的製剤の多くは高分子化合物で母乳移行が少なく、ガイドライン2024では「授乳可能」とされるものが増えています1)。
母乳栄養は児に対するメリットが多い一方、産後は関節リウマチが再燃するケースがあります。抗リウマチ薬が必要となるケースが多いため、治療薬は患者の希望や薬剤の安全性を総合的に検討して選択することが必要です1)。