薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年12月24日 ずみ

ACE阻害薬の空咳!なぜARBで止まる?薬剤師の対応フロー

【特集】高血圧治療薬「ARB」と「ACE阻害薬」の使いどころのメイン画像
☞この記事でわかること
  • ACE阻害薬特有の副作用である空咳の原因
  • ACE阻害薬の「カリクレイン・キニン系」への作用
  • ACE阻害薬で空咳が出たときに薬剤師がとるべき対応

高血圧や心不全などの治療で広く使用される「ACE阻害薬」と「ARB」。共通点の多い2種類の薬ですが、空咳の副作用はACE阻害薬特有のものであることはよく知られています。本記事では、その理由と副作用が出た場合の薬剤師の対応について解説します。

「ACE阻害薬」の“空咳”はブラジキニンの蓄積が原因

「ACE阻害薬」による空咳は、発現率5〜35%と比較的よく起こる副作用です。主な原因と考えられているのが、ブラジキニンの蓄積です。

ブラジキニンは感覚神経(特にC繊維)を刺激し、咳反射を亢進するといわれています。ACE阻害薬とARBは”似た作用”があると認識されがちですが、ブラジキニン濃度が上昇しやすいのはACE阻害薬のみです。これは両者が作用する経路に明確な違いがあるためです。

「ACE阻害薬」はRAA系だけでなく「カリクレイン・キニン系」にも作用する

「ACE阻害薬」と「ARB」はいずれも血圧調整に関わるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を抑制することで降圧効果を発揮します。

ACE阻害薬はこの経路において、アンジオテンシンⅠからⅡへの変換酵素(ACE)を阻害します。しかし、それだけではなく、同じ酵素(ACE)がカリクレイン・キニン系で担っているブラジキニンの分解も同時に阻害します。

ACE阻害薬の空咳!なぜARBで止まる?薬剤師の対応フローの画像

著者作成

このカリクレイン・キニン系への作用こそが、ACE阻害薬特有の副作用を引き起こすポイントです。

一方、ARBはアンジオテンシンⅡがAT1受容体に作用するのを阻害する薬であり、ブラジキニンの分解には関与しません。そのため、同じRAA系を抑える薬であっても、空咳の発現率に大きな差が生じます。

「ACE阻害薬」で空咳が出た場合は、原則「ARB」に切り替えよう

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ずみ
ずみ

2018年北里大学薬学部卒業。 保険薬局やドラッグストア併設調剤薬局で6年間の経験を積んだ後、薬剤師としての現場を離れ、海外移住を決意。 様々な国の医療に触れ、現地で暮らす人々から健康相談を受ける経験をとおして、どこに住む人でも健康への不安なく過ごせるよう、薬剤師として自分にできることを模索中。 現在は医療ライターとして活動しながら、世界各地の医療・薬に関する情報や、日本に住む外国人向けの医療情報も発信中。

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