今さら聞けない!オンライン服薬指導とは?
2019年、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、薬機法)」の改正によって 、オンライン服薬指導が認められました。
もともと、改正前の薬機法第9条の3第1項では「薬剤を販売又は授与する場合には、その適正な使用を確保するため、薬局開設者が、その薬局で販売又は授与に従事する薬剤師に、対面により、服薬指導を行わせなければならない」と規定され、「服薬指導は対面で」が法律で決められていました。
しかし、2015年の日本再興戦略で「特例として国家戦略特区でのテレビ電話を活用した服薬指導が可能になるよう、法的措置を取る」という方針が明記され、議論と検証を経て、2019年12月、改正薬機法によりオンライン服薬指導が認められたのです。
2020年度診療報酬改定では、オンライン服薬指導に関する加算項目が新設(オンライン服薬指導に関する改定内容は「薬学管理料は5つのポイントをチェック 」をご覧ください)され、今後普及が進んでいくことが想定されます。
オンライン服薬指導の概要
オンライン服薬指導は、あくまで対面での服薬指導を補完するものとして位置づけられており、さまざまな制約があります。
たとえば、オンライン服薬指導は「薬剤師と患者に信頼関係がある」ことを要件としており、既に対面で服薬指導を行ったことがある患者しか利用できません。*
また、対象となる薬剤も既に対面で服薬指導をしたことがある医薬品に限られます。新規の処方や処方変更の場合は対象外になります。
対面とオンラインでの服薬指導の違いは費用面にもあります。ビデオ通話などのシステム利⽤に関する経費や、医薬品を患者宅へ送る費用は、療養の給付と直接関係ないサービスとして位置付けられており、患者への費用徴収が可能です。
まずは下記のニュース記事を読んで、オンライン服薬指導ならではの条件について知識を深めておきましょう。
*2020年4月10日に「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が厚生労働省より発出され、新規患者でも臨時的にオンライン服薬指導を利用できるようになりました。
オンライン服薬指導の進み具合は?
薬局薬剤師はオンライン服薬指導の導入状況や、オンライン服薬指導に対する印象についてどのように考えているのでしょうか。
m3.com薬剤師会員に実施したアンケートでは、オンライン服薬指導の導入について「対応済み・対応する」と回答した薬剤師は、全体の20%ほどにとどまっています。「予定・周りの様子をみる」が34%と最も多く、「対応する予定はない」が31%という結果でした。オンライン服薬指導の施行が2020年9月ということもあり、システムや人員体制などの整備もこれから、という薬局が多いようです。
また、オンライン服薬指導についてどのようなことに不安を感じるかについて聞いたところ、「患者さんの表情が読めない」「ご高齢の患者様がオンライン診療の仕方がわからないのではと心配」といった声や、「特別な事情でないかぎりやはり対面することが大切」といった対面での指導を主張する声、「コロナの影響で今後、ニーズが高まると思う」といった社会情勢を反映したものなど、さまざまな意見が寄せられました。
オンライン服薬指導にも生かせる指導の“ツボ”
オンライン服薬指導では対面の服薬指導以上にコミュニケーション能力が必要です。ここでは、患者さんのタイプ別の服薬指導のコツをまとめた記事をご紹介します。
下記の記事を参考に、服薬指導のスキルアップをめざしましょう。
- 副作用の説明がないと訴える患者さんのケース
「副作用を怖がり服用を中止してしまう患者さんもいるなかで、薬剤師はどの程度まで説明したらいいでしょうか?」 - 薬剤師の説明に納得しない患者さんのケース
「来局のたびに、細かく質問される。「そんなことも知らないの?」とバカにしたような態度をとられることも…。患者さんに納得してもらうには、どう説明すればいいでしょうか?「詳しいことは医師に聞いてください」以外の答え方も知りたいです。」 - 「他の薬局より値段が高い」と言う患者さんのケース
「患者さんの多くは、同じ処方せんでも、薬局によって値段が違うことを知らないようです。値段について疑問を持つ患者さんに納得してもらえる説明の仕方を教えてください。」
もともと、オンライン服薬指導は、離島やへき地などの医療資源の少ない地域に住んでいて、対面の服薬指導ができない人に対して実施することを想定していました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、いわゆる「3密」を避けながら薬物治療を続ける手段として、オンライン診療・服薬指導のニーズが徐々に高まっています。2020年4月からは緊急的な措置として、一時的に初診患者のオンライン診療も解禁されました。
日本薬剤師会をはじめ、医療団体は慎重姿勢を示していますが、これを機にオンライン服薬指導の普及が加速していく可能性は十分に考えられます。
皆さんの職場でも近い将来、オンライン服薬指導をするようになるかもしれません。いまのうちに知識を深め、いざ導入が始まったときも速やかに対応できるよう備えましょう。