オンライン服薬指導経験は2割。在宅エピソード
調剤室で生まれた「ベン」「ゼン」「カン」の三兄弟。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘するベンゼン三兄弟が、薬剤師に聞いた実態調査をレポートします。
m3.com薬剤師会員へ在宅医療に関するアンケートを実施したところ、約6割の薬剤師が「在宅訪問の経験がある」と回答。「在宅医療で困っていることは?」という質問には、「患者さんやそのご家族への対応」をはじめ、「医師や看護師、介護士とのコミュニケーション」といった意見が寄せられました。また、オンライン服薬指導の導入に関しては、「対応済み・対応する」との回答は20%程度にとどまり「まだ様子を見てる」との回答が34%と最も多い割合となりました。
Q 在宅訪問の経験はありますか?
ベン:
半数以上の薬剤師がすでに経験があるんだね。在宅訪問の現場では、どんなことに困っているんだろう?
Q 在宅訪問で困っていること、不安に思うことをお選びください
カン:
「患者さんの対応」や「患者家族の対応」を合わせると49%と約半数を占めるわ。他職種との対応では「医師」が22%ともっとも高い割合になったわね。
Q 在宅医療での印象深いエピソードを教えてください
- 訪問するにつれて栄養剤、市販の薬など飲んでいるのがわかった。何か力になりたくて介護支援専門員の資格を取りました。その研修中に脳梗塞のため自宅で明け方亡くなられました。忘れられない方です。
- 外来患者の応対に比べるとより患者の生活に深く関わることが可能なのが在宅の強みだと思います。患者の生活圏にすんなりと入ることは難しいですが、一度信頼関係を築くことができれば家族のように接してくださる方もいます。
- 高齢女性独居。ヘルパーなど介護サービスなし。 視覚障害があり、服薬管理が難しく患者といろいろ話し込んで服用方法や管理方法を検討しました。
- 80歳を超える高齢の患者で、骨折で入院して半年の間に認知症が発症。かつ進行が見られ排泄もままならなかった患者が、在宅に戻り家族の介護とコミュニケーションによって排泄は自分でトイレに行けるようになり会話もできるようになったことに驚いた。自分の長年過ごした家に戻る事の重要性を感じた。
- 便秘で緊急搬送を繰り返す患者さん。いつまでもセンノシドばかり処方するので、新薬を提案したが医師が忙しそうで「とりあえず、そのままで」と処方が変わることがなく、苦しむ患者さんを前に虚しくなった。
- 緩和医療の患者で高校生の息子が卒業するまでは生きたいと強い希望があった。こちらも24時間対応を続け、希望される日以上生きる事ができた。医療従事者として自分が出来る精一杯の事をし、その経験が今の自分の基盤となっている。
- 減薬の提案により患者の体調が回復したことと、それをすぐに受け入れてくれた医師や介護士に感謝したことをよく覚えています。
- 睡眠薬による副作用(ろれつが回ってなかった)に気づき、医師に連絡し、薬を変えてもらって副作用が無くなった。
- ケアマネの方から「コンプライアンスが悪いから是非お願いしたい」との連絡があり、在宅での服薬管理を開始した患者さんがいました。お薬カレンダーで見える化し、週に一回の頻度で訪問と配薬を行ったところ、暫くして足の浮腫が軽快し、歩くのも座るのも楽になり「先生、見て!足の浮腫が引いて楽になった。先生のお陰や!」と喜んでくださったこと。ただ、最終的には悪性新生物でお亡くなりになりました。
- 引きこもりの強迫性障害の患者さんへ在宅訪問を行っていたが、散歩から徐々に外に出られるようになり、初めて処方箋を持って来局してくれたこと。
ベン:
在宅医療は、患者さんの生活の中に踏み込むからこそ困難も多いぶん、他の医療従事者との連携も含めて、薬剤師としての力が試される現場だね。
カン:
それぞれの薬剤師が忘れることのできない患者さんとのエピソードを胸に秘めているのね。次は、オンライン服薬指導の導入についてのアンケート結果よ。
Qオンライン服薬指導の導入について
ベン:
「対応済み・対応する」との回答は20%程度なんだね。
ゼン:
「対応する予定がない」との回答が31%もあるんだ!
カン:
オンライン服薬指導の導入は技術的には可能だけど、対応する薬剤師や患者さんはまだ不安を抱えている印象だわ。
Q オンライン服薬指導について不安に思うことがあれば教えてください
- 特に高齢の患者などオンラインが使えない(その設備がないかあっても操作が十分にできない)。
- 患者さんの表情が読めない。
- 高齢の患者様方はPCやオンライン機器の取り扱いに不安がある方が多いので、どこまで導入が進むのか、実際に円滑なコミュニケーションを取ることが出来るのか不安に思います。
- システムの構築や個人情報の保護。患者側の操作。表情などの非言語で現れる情報をどこまでつかめるか。
- 在宅医療は患者や患者の家族とコミュニケーションを取ることが重要である。現状のような感染予防のためにオンライン服薬指導を活用することは代替えであって在宅医療には沿わないと考える。また、外来のオンライン服薬指導は都会の発想であり田舎の高齢者が普通に行える作業でない。コミュニケーションをとれない現代っ子の発想であり、かかりつけ薬剤師・薬局の発想ではない。
- 実際に訪問しないと、患者さんがどのように薬を管理しているのかがわからない。
- 温度感のある服薬指導に勝るものはないと思う。特別な事情でないかぎりやはり対面することが大切。
- 非常に今の時代に即した取り組みであると思う。特にコロナの影響で今後、ニーズが高まると思う。
- ご高齢の患者様が、なかなか利用しにくいのではないかと思います。ご高齢の方で、独居や、ご夫婦のみでお住まいの方が多いので、オンライン診療の仕方がわからないのではと心配です。
ベン:
オンライン服薬指導は、高齢者がうまく機器やシステムを使いこなせるのかという懸念はたしかにあるね。
カン:
患者さんとオンライン上でうまくコミュニケーションが図れるのか?という心配の声がとても多かったわ。
ゼン:
オンライン服薬指導はまだ始まったばかりだから、今後、業界全体で試行錯誤をして、よい方法を見出していけるといいな
ベンゼン三兄弟
ベン・ゼン・カンの三兄弟。調剤室で生まれ、日々がんばる薬剤師を見て育ってきた。薬剤師に元気を届けながら、自分たちもいつか薬剤師になる日を夢見ている。薬剤師がイキイキと働けるようにお手伝いをしたい!と奮闘中♪
《 ベン 》
正義感の強い三兄弟のリーダー。勉強熱心でいろいろなことに興味津々。
熱中するとまわりが見えなくなりがち。
《 ゼン 》
明るくてポジティブな三兄弟のムードメーカー。
調子にのりやすく失敗もするが、立ち直りも早い。
《 カン 》
優しくて気配りのできる三兄弟の癒やし系。控えめだけど実はしっかり者。
なぜかゼンへのツッコミは厳しい。
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