薬剤師のための転職・求人コラム

更新日: 2025年6月13日 薬剤師コラム編集部

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?のメイン画像 薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像1

「薬剤師はいらない」そんな言葉を聞いてドキッとしたことはありませんか?
IT化の波が調剤室にも押し寄せてきて、今ではさまざまな作業が機械化・自動化されてきました。
薬剤師の仕事がずいぶん減ってしまったと感じている方もいるでしょう。
このまま機械化が進んでいけば、薬剤師の仕事はなくなってしまうのでしょうか?

年収600万円以上・非公開求人多数!
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
確認
clickのアイコンの画像

「薬剤師はいらない」といわれる理由は何?

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像2

「薬剤師はいらない」といわれる理由はいくつかあります。
根拠となる具体的な理由もあれば、イメージにすぎないものもあります。
1つずつ見ていきましょう。

薬剤師は処方箋通りに調剤するだけと思われている?

薬剤師はいらないといわれる理由の1つに、薬剤師の仕事内容が一般に理解されていない点があります。
多くの人々は、薬剤師の仕事は医師の処方箋に基づいて薬を用意することだと思っているのではないでしょうか。もっと言えば、処方箋の通りに薬を出すだけと思っているかもしれません。

薬剤師はただ指示された通りに薬を出しているわけではなく、処方の内容が適切か、患者の体質に合っているか、他剤との飲み合わせに問題はないかといったことを、患者の過去の薬歴も確認しつつ慎重にチェックしています。もしも疑問が生じれば、医師に対して疑義照会を行います。
その上で薬を調剤し、さらに調剤内容にミスがないかを監査して投薬しているのです。

このように薬剤師は薬の安全性を確保し、適切な薬物治療が行われるように二重三重にチェックを重ねているのですが、こうした作業は外側からは見えにくいため、薬剤師の仕事の重要性が理解されているとは言い難い状況です。
そのため、ただ薬を出すだけなら薬剤師じゃなくてもいいのではないかという誤解が生じているといえるでしょう。

IT化やAIの進展で代替されるイメージがある

薬剤師の仕事の大半はAIで代替できるのではないかという考え方もあります。
現在、さまざまな分野でIT化が進みつつあるのと同様に、薬剤師の業界においても調剤監査システムや電子お薬手帳の導入、オンライン服薬指導など、デジタル技術を使った効率化が進んでいます。

病院から薬局へオンラインで処方箋を送信し、ロボットが自動調剤するいわゆるロボット薬局も、すでに一部の地域で実用化されています。

このような業務の機械化や自動化は薬剤師の負担を軽減するだけではなく、調剤過誤のような重大なミスを防ぎ、患者さんにとっても待ち時間の短縮となる等、メリットは大きいといえるでしょう。

その反面、業務の機械化によって薬剤師の仕事の大半が奪われ、服薬指導のような対面業務もAIで代替できるのではないかとの考えから、薬剤師はいらなくなるといわれているのです。

登録販売者が増えている

登録販売者とは、第2類、第3類医薬品の販売を行うことができる専門資格を持つ人のことで、主に薬局やドラッグストアで働いています。

医師の処方箋がなくても購入できるOTC医薬品を提案したり、販売したりすることができるため、セルフメディケーションの取り組みが推奨されるようになって以降、特に重要性が増し、資格を取る人が増えてきました。
雇う側としても、登録販売者の方が薬剤師よりも安い賃金で雇えるため、需要が増しています。

このように登録販売者の資格取得者が増えている背景も、薬剤師不要論の根拠となっている面があります。

ただし登録販売者は、第1類医薬品の販売と調剤業務については行うことができません。
第1類医薬品の販売と調剤業務は薬剤師しかできない業務です。
けれども、調剤以前の薬剤のピッキングについては、薬剤師以外のスタッフが行うことが容認されており、こういった事情も薬剤師の仕事が減っていくとの印象を与えているといえます。

薬剤師が飽和するのではないかと思われている

薬剤師人口は年々増加の一途をたどっています。
たとえば2016年度の薬剤師人口は30万1323人でしたが、2018年には31万1289人、2020年は32万1982人と、毎回3.3〜3.4%ずつ増加しています。

2022年の調査では薬剤師人口は32万3690人、前回と比べると0.5%と微増ではありましたが、相変わらず薬剤師を目指す人は多いことがうかがえます。
2006年に薬学部が6年制となり、全国的に薬学部の新設が相次いだことも、薬剤師人口の増加に拍車をかけているといえるでしょう。

厚生労働省が行った薬剤師の需要供給調査では、今後数年間は薬剤師の需要と供給が均衡した状況が続くものの、長期的には次第に供給過多となることが見込まれると指摘されています。
これらのデータの通り今後も薬剤師人口が増え続ければ、やがて飽和状態になってしまうとの予測が、薬剤師はもういらないという論調のもとになっていると考えられます。

参考資料:「令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 /厚生労働省
参考資料:「薬剤師の需給調査」 /厚生労働省

非公開の薬剤師求人の紹介を受ける

アイコンの画像他の人の意見は?「薬剤師はいらない」と言われる理由について掲示板でチェック!

薬剤師がいらない未来ってどんな状態?

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像3

実際に薬剤師がいらない未来が訪れたとしたら、いったいそれはどんな世界でしょうか。
薬剤師がいらない世界をシュミレーションしてみましょう。

薬剤師がいらない未来とは

たとえばあなたが風邪と思われる症状で体調を崩し、病院を受診したとしましょう。
医師が薬を処方してくれました。
処方箋はオンラインで自動的に薬局に転送され、あなたが薬局を訪れたときにはすでにロボットが調剤を済ませています。

あなたの薬歴やアレルギー歴、現在常用している薬については、監査システムで管理されているため、処方された薬の安全性や飲み合わせによる副作用については何も心配ありません。
服薬の仕方や注意点についてはAIが説明してくれます。

ここであなたが、医師にはうまく伝えきれなかった困りごとや不安をAIに伝えたとします。
たとえば喉の痛みがひどく、水を飲むことすら困難であること、そのため薬がうまく服用できるのか不安を感じるといった具合です。
しかしAIは機械的な説明を繰り返すだけです。
あなたは諦めて薬を受け取るか、もう一度医師に相談しに戻るしかありません。

また、あなたがある日ひどい偏頭痛に襲われたとしましょう。
よくあることなので、病院には行かず、ドラッグストアでいつもの頭痛薬を購入して対処することにしました。

ところが登録販売者に相談すると、あなたが求める薬とは別の薬を勧めてきます。
その薬は以前も試したことがあるのですが、あなたにとってはあまり効果が実感できないものでした。

そこであなたはその薬ではなく、いつも服用している鎮痛剤を求めましたが、あなたが求める薬は第1類医薬品にあたるため、登録販売者は販売することができないということでした。
あなたは諦めて帰るしかありませんでした。

こんな未来は実現するのか?

いかがでしょうか。
確かに薬剤師がいなくても、一定の業務については滞りなく進めることはできるでしょう。
無駄な時間がなく、ヒューマンエラーも起こらず、正確な業務が期待できるという点は大きなメリットです。
しかし、患者さんの心情に寄り添った対応や、イレギュラーな事態への柔軟な対応は、AIだけでは対処しかねるでしょう。

また、登録販売者だけでは、必ずしも患者さんにとって必要な薬が提供できるとは限りません。
薬剤師不在ではどうしても補いきれない問題が、たくさん浮かび上がってくることがわかりますね。

ドラッグストア薬剤師の求人を見る

薬剤師は本当にいらないのか

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像4

薬剤師は本当にいらないのでしょうか。
いえ、そんなことはありません。むしろこれからの世界では、薬剤師がいなければ困ることのほうが多くなってくるほどです。
ただし、そのためには求められる薬剤師像が変わりつつあることも理解しておかなければなりません。

薬剤師の仕事は対物業務から対人業務へ

かつての薬剤師の仕事は、たしかに調剤業務そのものに重点が置かれていた面があります。
医薬分業の当初の目的は、医師と薬剤師がそれぞれの専門領域を分担しあうことで不必要な処方や過剰投与などを防ぎ、薬の安全性を確保することでした。
そのため調剤と監査といった対物業務が薬剤師業務の中心と考えられていました。

しかし2015年、厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン ~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~ 』の中で、かかりつけ薬剤師・薬局として地域医療や在宅医療に積極的に取り組むことを、これからの薬剤師の役割としていくビジョンを出しています。

薬剤師の仕事は、薬剤についての幅広い専門知識を生かし、地域の人々の健康維持や健康増進に積極的に関わること、つまりコミュニケーションを主体とした対人業務へと変化しているのです。

参考資料:『患者のための薬局ビジョン ~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ 』 /厚生労働省

AIで代替可能な業務と不可能な業務

薬剤の調剤や相互作用の確認、薬の分包や一包化といった作業は、AIの方がむしろミスもなく、安心して任せられるかもしれません。AIには、作業を繰り返すことで学習していく能力もあるので、上手に活用すれば薬剤師の負担はかなり軽減されます。
患者の薬歴記録や薬剤の在庫管理といった事務作業も、AIを活用したほうが効率が良いでしょう。

しかし、医薬連携のような医療関係者同士での情報共有や、服薬指導をはじめとする患者さんとのコミュニケーションは、AIで代替することは不可能です。
たとえば患者さんに体調を尋ねる場合でも、薬剤師は相手の言葉だけではなく、顔色や声音、姿勢、歩き方など全体の様子からさまざまなことを読み取り、状況を判断します。

時には言葉の裏に隠された真意を汲み取る必要もあり、こうしたコミュニケーションはAIにはできません。

また、患者さんの不安に寄り添うような言葉がけや、相手を傷つけないよう配慮しながら言葉をかけるといったことも、薬剤師だからこそできるコミュニケーションです。ただ相槌を打ちながら聞くだけでも、患者さんの不安をやわらげる効果はあります。

これからの薬剤師に求められるのは、コミュニケーションを主体とした対人業務であることは先に述べました。
AIの導入により業務が省力化されることで生まれる余剰時間をどう生かすのか、薬剤師に求められるのは、より丁寧で注意深い服薬指導に注力することといえるでしょう。

高齢化時代に高まる薬剤師の役割

「2025年問題」といわれるように、団塊の世代が全員75歳を迎える2025年以降、日本はいよいよ超高齢化社会に突入します。
膨大に膨れ上がると予想される医療費を削減するため、入院ベッド数は徐々に減らされつつあり、今後は在宅医療の比重がますます大きくなると考えられます。

しかし、たとえば患者さんの自宅を訪問して、服薬指導や残薬の管理などを行う訪問サービスをAIが行うことはできません。
かかりつけ薬剤師・薬局の取り組みが重視され始めたように、これからの薬剤師は地域包括ケアの中心を担う存在として、在宅医療のスキルや経験が重宝されるようになるでしょう。

在宅訪問対応の薬剤師求人を見る

薬剤師の仕事がなくなることはない

これから先、高齢化社会がどんどん進んでいくにつれ、在宅医療や医薬連携の必要性は今以上に増していきます。
その中で求められるのは、相手の心情を推し量ったり、真意を聞き取ったりする力です。
そのためには普段から継続的なコミュニケーションをとり、信頼関係を築いておく必要があります。

また、薬についての情報提供をする際も、相手の理解度や状態に応じて伝え方を変える、わかりやすい表現を用いる等の工夫や配慮が不可欠です。
このように、コミュニケーションを主体とした対人業務は、やはり薬剤師にしかできない仕事です。
患者さんの命と健康を守る薬剤師の仕事がなくなることはありません。

未経験・ブランクのある方OKの非公開求人の紹介をうける

これから必要とされる薬剤師でいるポイント

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像5

IT化やAIの導入が進む中で、変わらず必要とされ続ける薬剤師でいるために必要なことは何でしょうか。

専門性を深める

さまざまなニーズにこたえていくためには、知識のアップデートは欠かせません。
医療や薬学の世界は日々進歩していますが、最新の情報をキャッチし、医療関係者や患者さんに有益な情報が提供できるように日々努力を続けましょう。

このような日々の努力の積み重ねや、薬剤師としての専門性を客観的に証明してくれるのが、認定薬剤師や専門薬剤師の資格です。
かかりつけ薬剤師や在宅医療への取り組みを意識するなら、ぜひ資格は取得しておきたいところです。

高い専門性を持つことは、医療関係者や患者さんからの信頼につながりますし、今後のキャリアアップにも役立ちます。

資格取得支援がある薬剤師の求人を見る

コミュニケーション能力を磨く

薬剤師の仕事の中心は対物業務から対人業務へと大きく変わっています。
相手と信頼関係を築き、業務を円滑に進めていくには、これまで以上にコミュニケーション能力の向上が求められます。

相手の立場や心情を慮る力や共感力、相手の意見をしっかりと聞く姿勢、相手の考えや状況に配慮しつつ自分の意見もきちんと伝える言葉選びなど、コミュニケーションに必要な要素はたくさんあります。
普段から意識して、コミュニケーション力を高める努力をしておきましょう。

地域に根ざして働く

これからの薬剤師は、何かあったときすぐに相談しやすい、頼りになる存在であることが求められます。
まずはかかりつけ薬剤師を目指し、やがては地域医療の中核を担う存在になれるようがんばりましょう。

そのためには、日頃から地域の人たちと密接にかかわりあうことも大切です。
薬のことだけではなく、食事を含めた健康相談に応じるなど、地域のすべての人の健康を守ることが薬剤師の仕事なのです。

地域密着型など、ご自身に合った条件の求人を紹介してもらう

ITやAIを使いこなす

前述したように、IT化やAIの導入は薬剤師業務の軽減や効率化に非常に役立ちます。
IT化やAIの導入によって薬剤師の仕事が奪われるわけではないことは、十分おわかりいただけたでしょう。
むしろ上手に使いこなすことで、薬剤師はさらに質の高い仕事を提供することができるようになるのです。

そのためには薬剤師自身がITスキルを磨き、積極的にIT化を進めていく必要があります。
その上で、ITやAIでは実現することができない、患者一人ひとりへのきめこまやかな対応と良質な医療の提供を、薬剤師が中心となって推進していくべきだといえるでしょう。

年収600万円以上・非公開求人多数!
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
確認
clickのアイコンの画像

まとめ

薬剤師いらないといわれる理由、処方箋通りに調剤するだけと思われている?の画像6

薬剤師の仕事は単なる薬の調剤ではなく、人の命や健康に直接関わるものです。
高齢化社会が進む中、求められるのは患者さん一人ひとりのニーズに合った質の高い医療であり、そのため今まで以上に専門性の高い知識とスキルが求められることになるでしょう。
かかりつけ薬剤師をはじめとした地域密着型の取り組みは、薬剤師が地域医療を牽引していく中核の存在として期待されていることにほかなりません。

今後はITやAIで対応可能な業務は可能な限り自動化し、薬剤師は地域医療に必要な専門スキルや対人スキルを磨くことにもっと注力するべきでしょう。
ITやAIをうまく使いながら薬剤師の存在価値を高めていければ、薬剤師の仕事がなくなることはありません。

働き方を選べる薬剤師の転職のご相談、お気軽にご連絡ください。

ご相談は無料です。転職コンサルタントに相談してみませんか?

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

薬剤師コラム編集部の画像

薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
m3.com薬剤師会員への意識調査まとめや、日本・世界で活躍する薬剤師へのインタビュー、地域医療に取り組む医療機関紹介など、薬剤師の仕事やキャリアに役立つ情報をお届けしています。

キーワード一覧

薬剤師のための転職・求人コラム

この記事の関連記事

アクセス数ランキング

新着一覧

28万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

キャリア 医薬品情報・DI 薬物療法・作用機序 服薬指導 医療過誤・ヒヤリハット 年収・待遇 プロブレム 医療クイズ 疾患・病態 SOAP
薬剤師の転職なら!
マンガでわかる薬キャリAGENT
詳しく見る