第104回の傾向④ 臨床的問題にチャレンジ
薬学が6年制に移行してから、薬学生は病院・薬局での実務実習を経験した後で薬剤師国家試験を受験しています。臨床現場で体験することで修得すべき「考える力」や「判断力」を必要とする出題が増えています。今回は「臨床的問題」の中から2問を用意しましたので、どのような問題が出題されているか確認しながらチャレンジしていただければと思います。
骨粗しょう症と脂質異常症の既往があり、アレンドロン酸錠35mgとロスバスタチン錠2.5mgを服用中であった。半年前から残尿感の自覚と尿勢の低下を認めていた。
検診で、前立腺特異抗原(PSA)が37.18 ng/mL であった。精密検査の結果、前立腺がんの診断を受け、ホルモン療法が開始された。
(処方1)
リュープロレリン酢酸塩注射用キット 3.75mg 1キット
4週間に1回 皮下注射
主に初回投与初期に出現する副作用はどれか。1つ選べ。
- ほてり
- LDLコレステロール値の上昇
- 血栓塞栓症
- 骨密度の低下
- うつ状態
食中毒が懸念されており、手の消毒を推奨することになった。この避難所には下記の消毒剤が用意されていたが、希釈するための上水が不足していた。
希釈をしないで使用できる消毒剤はどれか。2つ選べ。
- ベンゼトニウム塩化物液(0.2w/v%)
- クレゾール石ケン液(50vol%)
- ベンザルコニウム塩化物液(0.05w/v%)
- 消毒用エタノール(80vol%)
- クロルヘキシジングルコン酸塩液(5w/v%)
LH-RH誘導体であるリュープロレリン酢酸塩は、エストラジオール及びテストステロン分泌を抑制させることにより、女性に対しては子宮内膜症及び子宮筋腫、閉経前乳がんなどの治療に、男性に対しては前立腺がんなどの治療に用いられる。副作用の中でも主に初回投与初期に見られるものとして、ほてりがある。
リュープロレリン酢酸塩の副作用としては、解答のほてり以外の選択肢であるLDLコレステロール値の上昇、血栓塞栓症、骨密度の低下(骨塩量の低下)、うつ状態なども発症します。副作用として起こり得るものの中から、初期に生じる副作用を問うもので、臨床経験を活かして正答を導く必要がある問題です。
手指・皮膚の消毒に使用する場合、ベンゼトニウム塩化物は0.05~0.1w/v%、
クレゾール石けんは0.5~1vol%、クロルヘキシジングルコン酸塩は0.1~0.5w/v%の濃度で用いるため、選択肢の濃度の製品は、希釈なしでは使用できない。
選択肢は全て、手指・皮膚の消毒に使用できる消毒薬であり、その中から、豪雨災害という緊急時に希釈なしで使用できる消毒薬を選択できることは薬剤師の職能を発揮するために重要な知識となることでしょう。正解が2つのため正答率が低いですが、選択肢3の選択肢率は76 %、選択肢4の選択肢率は65%となっています。
※薬学ゼミナール自己採点システムによるデータ(12,555名参加)より