社会人や主婦から薬剤師になるにはどうすればいい?独学で免許取得は可能?


社会人として何年か働くうちに、資格職の強さをうらやましく感じることがあるかもしれません。また、家庭の事情で主婦になった人がパートを探そうとすると、薬剤師パートの時給がとても高いことに惹かれることもあるでしょう。
今はリスキリングが政府からも言われるようになり、社会人となってからも学び続けることが推奨されています。また、人生100年時代とも言われ、複数のキャリアを経験することも一般的になってきました。
では、社会人や主婦からでも薬剤師になることはできるのでしょうか?また、独学で薬剤師の資格を取ることは可能なのでしょうか?
ここでは、一度社会に出た人が薬剤師になるにはどうすればよいのかについて解説します。
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社会人や主婦からでも薬剤師になれる?

薬剤師は、医療現場で不可欠な専門職として、高い知識と責任が求められる仕事です。
社会人や主婦から薬剤師を目指すことは可能ですし、年齢制限はありません。
しかし、その道のりは決して簡単ではありません。
薬剤師になるための条件について詳しくみていきましょう。
薬剤師になるための条件
薬剤師免許は国家資格で、 薬剤師国家試験を受けて合格しなければなりません。
また、国家試験を受けるためには、薬剤師法で以下の条件が定められています。
- 6年制の薬学過程を修めて卒業した者
- 外国の薬学校を卒業したか、外国の薬剤師免許を受けた者で、6年制の薬学過程を修めて卒業した者と同等以上の学力及び技能を有すると認定された者
参考:薬剤師法
つまり、薬剤師になるためには以下のステップが必要なのです。
- 薬学部を卒業すること
- 薬剤師国家試験に合格すること
薬剤師は独学ではなれない
上記のように、薬剤師になるためには薬学部で専門の勉強をする必要があり、独学のみで国家試験を受けることはできません。
薬剤師は人の命に関わる医薬品を扱う専門職です。単に知識を覚えるだけではなく、実験や実習も行いながら学んでいくことになります。
独学で対応できるのは大学に入学するまでです。
大学の既卒者は薬学部に編入できる?
通常の大学入試を受けて入学するのではなく、大学に編入すれば、6年間という期間を短縮することができます。
一部の私立大学では編入制度を設けており、すでに大学を卒業した人や、医療系の専門学校を卒業した人の場合、試験に合格すれば大学2〜4年生に編入することが可能です。
試験の内容は、理系の学力試験や小論文、面接などとなっています。編入後はすぐに薬学部のハードな勉強についていかなければならないため、 しっかりした準備と覚悟が必要です。
編入の定員は数人程度と少なく、編入できる学年や条件、入試の内容は大学ごとに異なっています。編入試験を考える際には、事前にきちんと確認しましょう。
働きながら薬学部に通うことは可能?
薬学部は全日制のみで、夜間学部や通信制の大学はありません。学習内容も高度なので、アルバイト程度なら可能ですが、仕事との両立は現実的ではありません。
基本的には仕事を辞めて学業に専念することになるでしょう。
薬剤師へのステップ1:薬学部

薬剤師になるためには、大学の薬学部を受けて合格しなければなりません。どのような準備が必要なのでしょうか。
医療系の薬学部には一般的な大学の学部とは違いがあります。その違いについて確認してみましょう。
薬学部は6年制
以前は4年制の薬学部を卒業すれば国家試験を受けることができました。
しかし、2006年度から、医療の高度化に対応し、より患者とのコミュニケーション能力に長けた薬剤師を養成するため、薬学部の教育期間は4年から6年に延長されました。
1年次から3年次までは薬学の基礎を学ぶ期間です。
4年次には全国共通の薬学共用試験が実施され、合格すれば5年次以降に病院・薬局などの医療現場での実務実習に進みます。
6年次は卒業研究、卒業試験と国家試験の勉強期間となります。
薬学部の学費
薬学部の学費は、私立大学の場合、6年間で1200万円〜1500万円程度が一般的です。
国公立大学の場合は比較的安く、450万円程度に抑えられるものの、それでも高額であることに変わりはありません。
先述したように、仕事をしながら大学に通うことはできません。奨学金もありますが、学費をすべてカバーすることは難しいでしょう。
薬学部の難易度
薬学部の入試難易度は基本的に高くなっています。特に学費が安く、高度な研究が行われている国公立大学は非常に人気があるため、競争率も高くなっています。優秀な現役受験生との戦いになります。
私立大学は、国公立大学に比べるとハードルは低くなっており、偏差値は大学によって違いますが、比較的入学はしやすいでしょう。
ただ、薬学部の場合、大学合格がゴールではなく、そこから勉強が始まることは心得ておかなければなりません。
薬学部の勉強はハード
薬学部では、基礎薬学を基本として、医療薬学・臨床薬学・社会薬学などについて学びます。
基礎薬学は薬の成り立ち、作用のしかた、そして創薬が中心となるのに対し、医療薬学・臨床薬学・社会薬学は、薬を正しく使うことを目的としています。
5年次以降は病院や薬局での実務実習によってより実践的なスキルを磨いていきます。実習が増えることで、忙しくなります。
6年次は、卒業研究を深め、卒業論文を書き上げます。一方で、国家試験合格へ向けての対策もしていかなければなりません。大学を卒業しなければ国家試験の受験資格が得られないので、どちらもおろそかにできず、プレッシャーも大きいといえます。
薬剤師へのステップ2:薬剤師国家試験

大学を卒業したあとには、いよいよ薬剤師国家試験となります。
薬剤師国家試験とは
薬剤師国家試験とは、薬剤師の資格を取得するための試験です。
毎年2月に、全国9カ所で実施されています。
試験内容は非常に広範囲で、必須問題試験、一般問題試験 (薬学理論問題試験・薬学実践問題試験)に分かれ、基礎薬学から臨床薬学までカバーしています。
薬剤師国家試験の具体的な実施要項については次のサイトをご覧ください。
参考:薬剤師国家試験 /厚生労働省
薬剤師国家試験が実施されるのは年1回のみで、不合格となった場合は翌年の試験を受けることになります。
薬剤師国家試験の合格率
国家試験の合格率は例年約70%前後です。
2024年2月に行われた第109回薬剤師国家試験の合格率は68.43%でした。
参考:第109回薬剤師国家試験 大学別合格者数 /厚生労働省
合格率は大学によって約30〜90%と大きな差がありますが、やはり個人の努力が合否の分かれ目となると言えるでしょう。
また、合格率は、新卒が高く、既卒者は低い傾向があります。勉強のモチベーションを保つことの難しさが表れていると言えるかもしれません。
社会人から薬剤師を目指すときに考えたいこと

これまで見てきたように、社会人から薬剤師を目指すことは不可能ではありませんが、いろいろとクリアしておかなければならないことがあります。
薬剤師への一歩を踏み出す前に確認しておきたいことをまとめました。
お金は大丈夫か
私立大学の薬学部に通うためには、1000万円を超える学費がかかります。
また、大学受験にもお金がかかりますし、大学に通っている間の生活費も必要です。
まず、そのような学費や生活費が準備できるかどうか、資金計画をきちんと考えましょう。奨学金や教育ローンを利用することもできますが、薬剤師として働きはじめたあとに返済が必要となります。
また、大学に入れば、薬学部に通っている6年間に稼ぐことのできた収入は棒に振ることになります。薬剤師は比較的高収入の職種ですが、薬剤師となったあとに、薬学部の学費と得られなかった収入分に見合った収入が見込めるかなど、きちんと確認しておきましょう。
お金についてはさまざまな面から考えて、冷静に具体的に判断することが大切です。
薬剤師になるには時間がかかる
薬剤師になるためには、最低でも薬学部の6年がかかります。
大学を受験して合格するまでの準備期間を考慮すると、さらに長い時間が必要です。
たとえば、25歳で薬剤師になりたいと考え、受験勉強に2年かかって27歳で入学できたとしても、薬剤師として働き始めることができるのは33歳ということになります。
もし、国家試験に不合格となった場合は、再受験までもう1年かかります。
また、国家試験に合格して薬剤師となれたとしても、就職するときは新卒スタートの給与となります。社会人として働き続けていたときの給与より下がってしまう可能性もあります。
人生のなかで、お金は取り戻すことができますが、時間は返ってきません。自分の人生設計も含めて、しっかり考えておきましょう。
周囲の理解は得られるのか
社会人にとって、薬剤師を目指すことは大きなチャレンジです。
そのときには、家族をはじめとしたまわりの人理解とサポートも成功の鍵となります。
家族からお金や生活面でのサポートを得られれば、勉強に集中することができます。
また、6年間という長い間には、本当に薬剤師になれるのか、不安になってしまうこともあるでしょう。そんなときに、まわりの人に「あなたならできる」と応援してもらえることは、大きな力になります。
本気で薬剤師を目指すなら、家族ときちんと話し合って理解してもらうことが必要不可欠です。
薬剤師以外におすすめの資格

薬剤師になるためには、時間もお金もかかります。
思っていたよりも厳しかったという人もいるのではないでしょうか。
しかし、現実的に薬剤師は難しかったとしても、薬剤師に近い職種で働くことはできます。
ここでは、社会人や主婦にとっても比較的取得しやすい資格をご紹介します。
登録販売者
医薬品に関わり、ドラッグストアなどで働ける資格に、登録販売者があります。
医薬品は基本的に薬剤師のみが販売可能とされてきましたが、2009年に施行された薬事法改正により、一般医薬品(OTC医薬品)の一部は登録販売者も販売できるようになりました。
登録販売者資格を取得すると、一般用医薬品のうち、「第二類・第三類医薬品」の説明と販売ができるようになります。
薬剤師と異なり、国家資格ではありません。受験資格に特別な条件はなく、年齢や職業を問わず、誰でも受験可能です。
試験は1年に一回、都道府県ごとに行われ、試験の合格率は40〜50%です。
通信教育や通学・オンラインの講座もありますが、独学でも合格は可能です。仕事をしながら、家事や育児と両立させながら勉強を進めることができます。
社会人が取得するにはおすすめの資格だと言えます。
調剤事務管理士
調剤事務管理士は、調剤薬局で事務職として働くための資格で、薬局の運営をサポートする役割を担います。医師が交付した処方せんの受付けや会計、保険請求分のレセプト作成など、事務全般を担当します。
調剤事務管理士の資格がなくても、調剤薬局で事務をすることはできます。しかし、調剤事務は専門的な知識が必要となるため、資格を持っていれば転職の際に大きなアピールになります。
調剤事務管理士は民間資格で、受験のための条件は特にありません。年齢制限もないので、誰でも受験できます。合格率は60%程度です。
試験はインターネットや在宅で受験できます。通学やオンラインの講座もありますが、きちんと準備すれば、独学でも合格可能です。
医療事務
病院やクリニックなどの医療機関で、受付や会計などの患者対応、レセプト作成などを行う医療事務は、主婦や社会人に人気の資格です。
医療事務も、仕事をするために資格は必須ではありませんが、資格を持っていれば採用のときに優先されるでしょう。
医療事務は民間資格で、いくつかの種類がありますが、いずれも受験のための条件はありません。
医療事務取得のための専門学校や通信教育も多くありますが、独学で取得も可能です。テキストなども多く出ているので、自分に合ったやり方合格を目指してみてはいかがでしょうか。
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まとめ

社会人や主婦から薬剤師を目指すことは可能ですが、独学で薬剤師免許を取得することはできません。
大学への入学が必須となり、時間や費用もかなりかかります。一方で、年齢制限はないので、いつからでも意欲さえあればチャレンジすることはできます。
自分の人生設計やお金の状況、まわりのサポートなどを考慮しながら、薬剤師を目指すかどうかは慎重に判断しましょう。
また、薬剤師以外にも医療分野で活躍できる資格は多いため、選択肢を広げて検討してもよいかもしれません。
この記事を参考に、これからのキャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。
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