調剤薬局で働く 現役薬剤師のキクオ が、日々薬局で繰り広げられる薬剤師のリアルな日常をお届けします。
薬剤師の現場にはドラマ『アンサングシンデレラ』のようなシーンってある?
リアリティーの高いシーンは調剤室の忙しさ
キクオが実際にあると思ったのは、調剤室のバタバタした感じです。
例えば以下のような。
刈谷主任「口じゃなくて手ぇ~動かす!」
みんな「動かすっ!!」
薬剤師や調剤補助さんが調剤室をバタバタバタバタ!
はい、まるで戦場です。調剤をするための籠もリアルに再現していたと思います。仕事中、薬剤師同士が会話をすることはありますが、薬局では目の前に患者さんが薬を待っています。薬剤師は処方せん内容に不備がないかをいち早く確認、そして正確に、最速最短で無駄のない動きを心がけています!このシーンは、普段の薬剤師業務が上手く表現されていたと思います!
これとは別に新人を拍手で迎えるのではなく、足踏みで歓迎するシーンでは「こんな薬局はどこにもないだろ」と思わず笑ってしまいましたけどね(笑)。桜井ユキさんが演じる主任・刈谷奈緒子も実際に調剤室にいそうです。キクオは調剤室にこういうまとめ役の薬剤師いるよな~とドラマを見ても、身体が休まらない気持ちになったのでした…(笑)。
人手の足りなさも薬剤師あるある
もうひとつ、あるあると思ったのは人手の足りなさ具合です。
薬剤部長「誰か良い人いたら紹介して!よろしく~!え、いない??わかる~~」
そう言葉を発するのは真矢ミキさんが演じる薬剤部長・販田聡子。
薬剤師数や病院の大きさを考えるとアンサングシンデレラの舞台は小さな病院ではなさそう。現実でも病院薬剤師は人手が足りません。新人薬剤師である相原くるみに対して「辞めないでねぇ~」と念入りにプッシュする薬剤部長の姿を見て、なんとも切ない気持ちになったのでした…。わかる~。
人数ギリギリで仕事に勤しむ姿、院内を早足で移動する主人公など「薬剤師っていろいろやってるのね」と思わせるシーンも多かったと感じます。この辺はまさに薬剤師業界の現状を表していましたね。
患者さんが薬局に侵入は実際に起こりえる!?
次はキクオが実際にないと思ったシーンです。
「患者さんが深夜に調剤室に侵入!薬剤師が襲われる!」。ドラマならではの展開ですよね!まぁ、ハラハラの展開でした。
院内で患者さんが行方不明に…。この患者さんの薬に対しての依存性も表現されていましたが、勝手に薬局に侵入し、そして大切に保管している薬を血眼になって探す場面は基本的にはないでしょう。
まれに病棟を抜け出してしまう患者さんはいます。でも、深夜の薬局はよりセキュリティを強くしていますし、なにより患者さんから脅されて、薬を要求されるのはさすがにやり過ぎだよー!!と感じました(苦笑)。
漫画版アンサングシンデレラにはない描写でしたし、ドラマを見た薬剤師は「いや、ないよっ!」と突っ込みを入れたくなる場面だったのではないでしょうか。もしもそんなことが起こってしまったら、すぐに担当の看護師さんを呼びにいくかもしれません(泣)。その前に「患者さんが脱走したー!」と病棟から連絡が入りそうですが…。
薬剤師が患者のSNSでプライベートを見ていいのか?
いやー、これは波紋を呼ぶシーンだったと思います。少しでも患者さんのことを理解しないといけない!と追い込まれた新人薬剤師「相原くるみ」が起こしたのが、SNSを用いて患者さんのプライベートを検索した場面です。
薬剤師は名探偵のように患者さんからいろんな情報を聞き出します。でもSNS(Instagram)を使って患者さんの服用しているものを確認するのはNGですよ。患者思いの新人薬剤師がどうにかして患者さんのことを知りたいと考えるのはステキです。しかし、調べるツールを間違えてしまうと、薬剤師が訴えられてしまう危険性もあるのではと感じたのも事実です。
おそらくこのシーンは多職種からもお𠮟りの声、同業者からも「いや、患者さんのSNSは見ないし…」と意見が出た場面といえるでしょう。また、周りの薬剤師が新人の行動を指摘していない点も不思議なポイントでした。正直、一気にドラマ熱が冷めてしまったシーンとなりました。トホホ…。
ドラマアンサングシンデレラを見たリアルな感想
初めて薬剤師が主人公となった医療ドラマ『アンサングシンデレラ』。ある程度の視聴率を獲得、維持するには過激なシーン、薬剤師としてありえないシーンは必要なのかもしれません。「ドラマだからね」と思って見れたら良かったのですが、途中キクオは「おーーい!」と思わずテレビに訴えかけるまでとなりました(笑)。気持ちはリモコン破壊。ついさきほどまで、来週の放映を楽しみにしていた自分はどこにいってしまったのでしょうか…。
キクオのInstagramには高校生や薬学生から「本当に薬剤師ってこんな場面あるの?」と聞かれることもあり、タジタジ…。看護師さんからも「薬剤師はそんなことしないよ」という声もいただきました。それだけテレビは影響力があるものです。患者さんからは「え?薬剤師って手品できるの?」なーんて(笑)。
私はアンサングシンデレラを見ても大きな変化はありませんでした。キクオは目の前の患者さんのことに精一杯。結局これに尽きるのかなと思います。ドラマに一喜一憂しないで、初心を忘れないこと、適切な薬剤師業務をし続けることが大切なんですね。すべての薬剤師が主人公・葵みどりを目指すのは酷かもしれません。前線で活躍しなくても、医療や同業をサポートする薬剤師もいてもいいのではないでしょうか。そう!薬剤師は縁の下の力持ちなんですから。