『フォシーガ』の適応追加、心不全患者に使う際に気をつけたいところは?

患者さんの質問に対して、回答に困ったことはありませんか? このシリーズでは臨床論文から得た知識を活用し、より説得力のある服薬指導をめざします。
実際の服薬指導のシーンを想定した会話形式で紹介します。
今回の論文
N Engl J Med . 2019 Nov 21;381(21):1995-2008. PMID: 31535829
内容:左室駆出率が40%以下の心不全患者に対する「ダパグリフロジン」は、糖尿病の有無にかかわらず、心血管死や心不全悪化を抑制すると示された研究。
有効性・安全性が示された臨床試験の患者背景(例:前治療や病態、年齢、体格)を把握しておく
過去には、臨床試験の結果を拡大解釈したことで、副作用がたくさん起きた事例もある
糖尿病でない患者さんは「低血糖」と言われてもピンと来ない可能性がある
「ダパグリフロジン」に心不全の適応が追加になりましたが、「どんな心不全にも安全で効果的」というわけではありません。どんな患者に、どんな点に気をつけながら使えば良いのか、薬剤師目線でのフォローが重要です。




『フォシーガ』の添付文書にも、「臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること」と記載があります1)。本研究で示された心不全の予後改善効果は、既に利尿薬やβ遮断薬などで治療を受けているHFrEF(左室駆出率が40%以下)の患者に、「ダパグリフロジン」を追加したことで得られたものですが、被験者の平均年齢は66歳と若かったこと、平均BMIは28と比較的体格の良い人が多かったことは押さえておく必要があります。
以前、「スピロノラクトン」でも同じように心不全に対する効果・安全性が示された2)ことがありますが、その時は全く異なる背景の患者にまで使われ、重篤な高K血症が急増しています3)。
