一人薬剤師を徹底解説!私は向いている?メリットデメリットも解説
業務をこなす中で、ふと「もっと自分のペースで働けたら」「人間関係に煩わされずに業務に集中できたら」と思うことはありませんか?
今回は、そんな働き方を実現する可能性を秘めた「一人薬剤師」という働き方がテーマです。
一見すると大変なイメージがあるかもしれませんが、向いている人にとっては多くのメリットもあります。
一人薬剤師に向いている人・向いていない人の解説や、そのメリット・デメリット、そして転職を考える上での注意点までを徹底解説します。
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一人薬剤師とは
一人薬剤師とは、その名の通り、薬局に薬剤師が常勤で一人しかいない状況で業務を行う薬剤師のことです。
調剤薬局だけでなく、小規模な病院の薬剤部や、一部のドラッグストア併設の調剤ブースなどでも見られる働き方です。
一人の薬剤師が、処方箋の受付から調剤、監査、患者様への服薬指導、薬歴管理、そして場合によっては医薬品の発注や在庫管理まで、薬局運営に関わるほぼすべての業務を担います。
一人薬剤師になるのはなぜ?
薬剤師は、患者さんの健康に直結する医薬品を扱う、責任の重い仕事です。
医療過誤のリスクなどを考えると、1人薬剤師は不適切なようにも感じられます。
にもかかわらず、薬剤師が一人で薬局を運営する背景にはいくつかの理由が考えられます。
まず、1日に扱う処方箋の数があります。小規模なクリニックの門前にある小規模な薬局では、処方箋の枚数が限られています。複数人の薬剤師を雇用するほどの業務量がない場合は一人で業務を行うことになります。
チェーン薬局であっても、コスト削減という観点から一人薬剤師となることがあります。
薬局経営者にとって、人件費は大きな負担です。小規模薬局の場合、薬剤師一人で運営できれば人件費を抑えることができます。
また、薬剤師が独立して小規模な薬局を開業する場合、当初は一人で運営することが一般的です。事業が安定して利益が出るまでは他の薬剤師を雇用することが難しいため、一人ですべての業務をこなすことになります。
一人薬剤師となる背景
では、このように一人薬剤師となるのには、どのような理由があるのでしょうか。
厚生労働省の調査によると、常勤の薬剤師が一人という薬局は全体の32.9%に及びます。
非常勤の薬剤師がいる薬局もあるので一概には言えませんが、実際にはかなりの薬局が一人薬剤師であることがわかります。
引用元:薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要 /厚生労働省
一人薬剤師になる主な原因は、人件費とのかねあいです。
調剤報酬の改定により薬局経営を取り巻く環境は厳しさを増しています。
常勤の薬剤師を二人以上雇用することはコストがかかるため、処方箋の多くない薬局では一人薬剤師となってしまうのです。
また、薬剤師は都市部に多く、地方では少なくなっています。
厚生労働省の調査によると、人口10万人あたりの薬剤師の数は、東京都が 235.7 人であるのに対して、沖縄県が149.4 、福井県163.6 人、青森県167.2 人となっています。
参考:令和4(2022)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 /厚生労働省
このように、地域によっては薬剤師不足が深刻であり、薬剤師を増やしたくてもなかなか雇用できないという実情もあるのです。
一人薬剤師は法律違反にはならないの?
「ダブルチェックなどができない薬剤師が一人しかいない薬局は違法にはならないのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この点に関しては、結論から言うと、必ずしも法律違反にはなりません。
省令によって、一人の薬剤師が扱える処方箋は、1日に平均40枚までと定められています。
この範囲を超えない限りは、一人薬剤師であっても違法とはならないのです。
また、この「40枚」というのは前年の平均であり、たとえば今月超えたからといってすぐに対応しなければならないというわけではありません。
薬剤師が退職し、代わりの人員が採用できないため一時的に処方箋が枚数を超えるような場合もすぐに問題とはなりません。
ただし、処方箋の数に対して薬剤師の数が明らかに不足している場合や、人員が減ったにもかかわらず対策しないような場合には、薬局開設者の責任が問われる可能性があります。
一人薬剤師の働き方
一人薬剤師は、薬局内で薬剤師のみが担当できる業務をすべて行わなければなりません。
基本となるのは、処方箋を持って来局した患者さんに対する調剤業務です。
一人薬剤師の場合、一連の作業を一人で全てこなす
- 処方箋に基づいて、正確かつ迅速に医薬品を調剤する調剤業務
- 調剤された医薬品が処方箋の内容と合致しているか、患者さんの情報と照らし合わせて確認する監査業務
- 患者さんに対して、薬の効果、副作用、服用方法、保管方法などを説明する服薬指導
- 患者さんの情報を記録し、継続的な薬学的管理を行う薬歴管理
薬剤師以外に調剤事務さんがいる場合は、事務作業など、分担できる業務もあるので、実際に担当する業務は薬局によって異なります。
このように、一人薬剤師は多岐にわたる業務を一人でこなすため、高い自己管理能力と効率的な業務遂行能力が求められます。
一人薬剤師のメリット
このように、負担の大きい一人薬剤師ですが、一人薬剤師という働き方には一般的にイメージされる大変さだけでなくメリットも存在します。
処方箋の枚数は基本的に多くない
処方箋の数が法令で決まっていることもあり、一人薬剤師が勤務する薬局は、基本的には処方箋枚数が少ない傾向にあります。
大規模な門前薬局のように常に多くの患者さんが訪れるわけではないため、時間に追われることなく、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合うことができます。
患者様とのコミュニケーションを大切にしたい、自分のペースで丁寧な服薬指導を行いたいと考える薬剤師にとっては魅力となるでしょう。
人間関係にわずらわされることがない
薬剤師の職場である調剤薬局は少人数なことが多いため、人間関係に問題が生じると働く上で大きなストレスとなることがあります。
一人薬剤師の場合、ほかの薬剤師を気にする必要がないので、人間関係にわずらわされることなく、自分のペースで業務に集中できます。
特に、これまでの職場で人間関係に悩んだ経験のある方にとっては、大きなメリットと感じられるでしょう。
年収が高い
一般的に、一人薬剤師は比較的年収が高い傾向にあります。
これは、一人薬剤師は管理薬剤師という位置づけになることや、一人で薬局の運営を担う責任の重さのためです。
また、一人薬剤師は求人を出しても採用が難しいので、給与の提示は比較的高めとなります。
より高い収入を目指したいと考える人にとって、一人薬剤師は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。
薬剤師としてのスキルが上がる
一人薬剤師は、調剤から服薬指導、薬歴管理、医薬品管理、事務作業まで、薬局運営に関わるほぼすべての業務を一人で行います。そのため、幅広い知識とスキルを習得し、薬剤師としての総合的なスキルを高めることができます。
特定の分野だけでなく、ジェネラリストとして活躍したいと考える薬剤師にとって、貴重な経験となるでしょう。
一人薬剤師のデメリット
このようにメリットがある一方で、一人薬剤師の働き方にはデメリットも存在します。
具体的にどのようなことがあるか、確認してみましょう。
忙しいときの対応が難しい
一人薬剤師がいちばん大変なのは、患者さんの来局が重なったり、複雑な処方の対応が必要になったりして業務が集中したときです。
患者さんを待たせてしまうと、プレッシャーを感じながら仕事をすることになります。
休憩や休みを取りにくい
職場に薬剤師が一人しかいないと、休憩や休みを取りにくいのは大きなデメリットです。
事前にわかっている休みであれば応援を要請することができますが、急な体調不良や用事などでも休みにくいのが実情です。
また、患者さんが多くて忙しい日は休憩時間を取ることも難しいことがあります。
働くうえで必要なときに休憩や休みが取れることは大切なポイントなので、休みの取りやすさや休憩時間についてはきちんと確認しておきましょう。
調剤過誤のリスクが高くなる
ダブルチェックを行う人員がいないため、調剤過誤のリスクは高くなります。
業務が集中したり、疲労が蓄積したりすると、集中力が低下してリスクがますます高まってしまうかもしれません。
薬剤師自身が注意して業務にあたることはもちろんですが、チェックリストや調剤過誤を防ぐためのしくみ作りなどの対策を用意しておくことが大切です。
一人薬剤師に向いている人
ここまでみてきたようなメリット・デメリットを踏まえると、一人薬剤師という働き方は向き・不向きが分かれやすいと言えます。
では、一人薬剤師に向いているのはどのような人なのでしょうか。
薬剤師のスキルを一通り身につけている人
一人で幅広い業務をこなさなければならないため、これまでさまざまな業務経験をして、調剤、監査、服薬指導、薬歴管理など、薬剤師としての基本的なスキルを一通り身につけていることが必要です。
薬剤師としての経験の浅い人や、特定の診療科のクリニックの門前薬局でずっと働いてきたという人がいきなり一人薬剤師にチャレンジするのは難しいかもしれません。
仕事を自分なりに組み立てることが得意な人
一人薬剤師は、薬局内のさまざまな業務を自分ひとりで行わなければなりません。
また、忙しくなる時間もあるため、業務を効率よく進めることも大切です。
そのためには、自分にとって働きやすくて効率的な業務フローを考え、自分の裁量で業務を進めて方を決める必要があります。
また、季節や時間帯に合わせて患者さんの流れを予測し、それに対応できるように準備しておくことも有効かもしれません。
指示待ちするタイプではなく、自分であれこれ工夫しながら行動できるタイプの人に向いています。
コミュニケーション力が高い人
一人薬剤師には、同じ職場の同僚とのかかわりは基本的にありません。
しかし、一人で働いているので、患者さんやクリニックの医師、他の医療従事者とのやりとりはすべて自分が行わなければなりません。
一人薬剤師には、「一人」というイメージとは逆に、さまざまな人とのコミュニケーション力が必要です。
とくに患者さんとのかかわりのなかでは、丁寧で分かりやすい説明、傾聴力、共感力など、高いコミュニケーション能力が求められます。
患者さんとの信頼関係を築き、病院や介護施設などと連携しながら地域医療に貢献したいという意欲のある方に向いています。
一人薬剤師に向いていない人
一方で、以下のようなタイプの方は、一人薬剤師の働き方になじめないかもしれません。
スキルが偏っている人
特定の診療科の調剤業務しか経験がない、服薬指導に自信がないなど、スキルに偏りがある場合、一人で全ての業務をこなすことは難しくなります。
苦手な分野がある場合は、事前にしっかりと克服しておく必要があります。
相談相手がいないと不安な人
業務で困ったことや判断に迷うことがあった際に、すぐに相談できる同僚がいないことは、一人薬剤師の大きなデメリットです。
誰かの指示のもとで働きたい、判断が必要なことは他の薬剤師と相談しながら進めたいと思う人は、一人薬剤師には向いていないでしょう。
一人薬剤師が難しいと感じたときは
一人薬剤師の求人に応募して一人薬剤師となっただけでなく、一緒に働いていた薬剤師が辞めたりして一人薬剤師の状態になることもあるかもしれません。
一人薬剤師が難しいと感じる場合、どのように対処すればいいのでしょうか。
調剤事務さんなどと業務を分担する
薬剤師は一人であっても、調剤事務さんがいる場合には、任せることができる業務は積極的に分担していきましょう。
処方箋の受付、会計、レセプト作成などの事務作業を分担することで、薬剤師は調剤や服薬指導といった専門業務に集中することができます。
自分なりのダブルチェック体制をつくる
監査を一人で行う場合、自分なりのダブルチェック体制を作り、調剤過誤のリスクを低減するように努めましょう。
間違えやすい薬の表示や置き場所を工夫する、業務中の指差し確認や声出し確認、監査システムの活用など、考えられる対策はしっかりとっておくことが大切です。
他店舗への異動を希望する
大手チェーンなどで勤務先に複数の店舗がある場合は、まず人員体制が整っている他の店舗への異動を希望してみましょう。
一人薬剤師が向いていないと感じた場合、無理して働き続けることはおすすめできません。
仕事をするなかでの問題点や不安に感じていることなどを伝え、増員や他店舗への移動が可能かどうかを相談しましょう。
転職する
どうしても一人薬剤師の働き方が合わないと感じ、ほかに異動できる可能性がない場合は、無理をせずに転職を検討しましょう。
薬剤師は転職によってキャリアアップしていくことができる職種です。
一人薬剤師としての経験は、転職活動においては強みとなります。
転職活動に際しては、「一人薬剤師がつらかった」ということを強調するのではなく、一人薬剤師をこなすなかで身につけたスキルや、そこで考えた業務改善のポイントなどを伝え、前向きな姿勢を示すようにしましょう。
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まとめ
一人薬剤師という働き方は、責任と裁量が大きいぶん、やりがいも大きい選択肢です。
処方箋枚数が比較的少なく、患者さん一人ひとりとじっくり向き合いたい、人間関係にわずらわされずに自分のペースで働きたい、そして何よりも薬剤師としてのスキルアップを目指したいという方にとって、魅力的な働き方となるでしょう。
しかし、その一方で、忙しいときの対応の難しさや、休憩・休みを取りにくいといったデメリットも理解しておく必要があります。
この記事を読んで、自分は一人薬剤師に向いているか、向いていないかを考え、これからのキャリアを選択する一助にしてください。
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