がん専門薬剤師になるには・資格取得方法、仕事内容や年収を解説
現在は国民の2人に1人ががんにかかると言われる時代です。
がんの治療は一般の人にとってもポピュラーな存在となっています。
がんの治療に関しては、「手術」「薬物療法」「放射線治療」が三大療法と言われていますが、近年では薬物療法の比重が高まってきました。
そのような流れのなかで、がんに対する薬物治療の高度化に伴い、薬剤師の専門性がますます重要になっています。
がん専門薬剤師は、がん薬物療法において高度な知識と技術を持ち、患者さんに最適な治療を提供できる薬剤師であることを証明する資格です。
本記事では、がん専門薬剤師の仕事内容、資格の取得方法、年収、そしてこの資格を取得するメリットについて詳しく解説します。
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がん専門薬剤師とは
「がん専門薬剤師」は、一般社団法人日本医療薬学会が認定している資格で、がん薬物療法において高度な知識・技術と臨床経験を有する薬剤師のことを指します。がん治療の最前線で活躍する専門家として位置づけられています7。
また、このがん専門薬剤師資格は、「平成19年厚生労働省告示第108号に基づく医療法上広告が可能な専門性に関する資格」として、薬剤師としては初めて医療法上広告が可能な専門性に関する資格として認められています。
その点でも、ほかの薬剤師の資格とは一線を画する資格だといえます。
がん専門薬剤師の仕事内容
がん治療は、医師や看護師、放射線技師などと一緒に、チームを組んで進めます。がん専門薬剤師は、その医療チームのなかで、薬物療法の専門家としてサポートを行います。
がん専門薬剤師の業務は、主に対物業務と対人業務の2つに分類されます。
対物業務(抗がん剤に関わる業務)
- 薬物治療計画の立案:個々の患者に最適な薬物療法計画(プロトコール)を医師と共同で作成します。
- 抗がん剤の選択支援:作成したプロトコールについて、薬物の専門家の立場から効果的な抗がん剤の処方設計をサポートします。
- 抗がん剤の管理:使用する薬剤を調剤し、投与量や投与間隔をチェックします。
- 治療効果の検証:治療開始後、医師と共に治療の経緯や効果を検証しながら、プロトコールの調整を行います。
対人業務(患者さんに関わる業務)
- 患者さんへの説明:治療開始前に、薬剤について使用の目的、効果、予想される副作用などについて患者に十分な説明を行い、理解を得ます。
- 薬物投与の管理:抗がん剤がきちんと投与されているか、効果が出ているか、副作用はどうかなど、患者さんの様子を見ながら薬物投与の管理を行います。
がん専門薬剤師が働く場所
公表されているがん専門薬剤師の認定者名簿を見ると、ほとんどが病院勤務で、しかも総合病院・大学病院・がんセンターなどに所属しています。
このあと解説しますが、がん専門薬剤師になるための条件には、症例報告や学会発表が含まれています。
がん患者の治療にあたっている専門的な病院に勤務している薬剤師が、その経験とスキルをもとに取得する資格であり、そのような病院勤務でないと取得は難しいと言えるでしょう。
また、資格取得後も、そのスキルを最も活かせるのはがん患者の多い病院になります。
なお、認定者名簿には、病院のほかに調剤薬局勤務の薬剤師もみられますが、非常に少数です。
がん専門薬剤師になるには
がん専門薬剤師になるには、日本医療薬学会が定めた認定条件をクリアしなければなりません。
ここからは、がん専門薬剤師になるためにはどのようにすればいいのかについて解説します。
がん専門薬剤師の認定条件
がん専門薬剤師の取得に関して日本医療薬学会が定める認定条件は厳しく、以下の11項目すべてを満たす必要があります。
- (1) 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
- (2) 薬剤師としての実務経験を5年以上有すること。
- (3) 申請時において、引き続き5年以上継続して日本医療薬学会会員であること。
- (4) 「日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師」、「日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師」、「日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上」、いずれかの認定を受けていること。
- (5) 日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師研修施設」において、日本医療薬学会の定めた研修ガイドライン に従って、がん薬物療法に関する5年以上の研修歴を有すること。
- (6) 別に定めるクレジットを5年で50単位以上取得していること。
- (7) がん専門薬剤師集中教育講座に1回以上参加したこと。
- (8) 日本医療薬学会の年会に1回以上参加したこと。
- (9) 自ら実施した5年のがん患者への薬学的介入を伴った症例報告50症例(3領域以上のがん種)を提出すること。
- (10) 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たすこと。
- (10-1) 学会発表:医療薬学に関する全国学会、国際学会あるいは別に定める地区大会での発表が2回 以上あること。日本医療薬学会が主催する年会において本人が筆頭発表者となった発表を含んでいること。
- (10-2) 論文:本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文を1報以上有すること。学術論文は、 国際的あるいは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告であること(編集委員以外の複数の専門家による査読を経ていない論文や商業誌の掲載論文は、本条の対象外)。
- (11) 日本医療薬学会が実施するがん専門薬剤師認定試験に合格すること。
参照元:一般社団法人日本医療薬学会がん専門薬剤師認定制度規程/日本医療薬学会
(https://www.jsphcs.jp/wp-content/uploads/2024/10/g-kitei.pdf)
単に研修や講座を受講したり、テストを受けたりすることで取れる資格ではありません。
5年以上の実務経験だけでなく、学会員として登録していること、クレジットを取得していることなどの条件があります。この条件だけでも5年以上の時間がかかるのです。
学会発表や論文執筆など、研究者としての側面も強くなっています。
なお、研修や講座への参加などにはそれぞれ一定の費用がかかります。
がん専門薬剤師にチャレンジを考える人は、時間をかけて計画的に条件をクリアしていく必要があります。
日々の仕事のなかでがん治療に関する経験を積み、症例を集めながら、学会や論文執筆の準備を進めて行かなければなりません。並行して、必要な研修を受けたり学会に出席したりしていきましょう。
がん専門薬剤師認定試験
がん専門薬剤師になるには、認定条件を満たした後、上記の条件の(11)にあるように、がん専門薬剤師認定試験を受験し、合格する必要があります。
試験の詳細については、日本医療薬学会のウェブサイトで確認できます。
参照元:2024年度 がん専門薬剤師 認定申請 がん専門薬剤師認定試験案内/日本医療薬学会
(https://www.jsphcs.jp/certification/oncology/sp/)
がん専門薬剤師には更新が必要
がん専門薬剤師の認定は、一度取得すれば永続的に有効というわけではありません。最新の医療知識と技術を維持するために、5年ごとの更新が必要です。
がん専門薬剤師の認定の更新を申請する人は、更新申請時点において以下の要件をすべてクリアしていなければなりません。
- (1) 申請時における認定期間中に継続して日本医療薬学会の会員であること。
- (2) 申請時における認定期間中に、別に定めるクレジットを50単位以上取得していること。
- (3) 申請時における認定期間中に、がん専門薬剤師集中教育講座に1回以上参加したこと。
- (4) 申請時における認定期間中に、日本医療薬学会の年会に1回以上参加したこと。
- (5) 申請時における認定期間中に、自ら実施した薬学的介入を伴ったがん患者の症例報告20症例を提出すること。
資格を更新する際にも高いハードルが課されていることがわかります。
がん専門薬剤師であるためには、常に最新の医療現場で働きながら勉強を続けていくことが要求されているといえるでしょう。
がん専門薬剤師の年収
がん専門薬剤師の年収を公式に調査したデータはありません。
また、実際の給与は医療機関や役職、経験年数などによって異なります。
一般的に病院薬剤師の給与水準は低くなっています。特に、新卒の薬剤師の給与は他業種と比べると低いです。
ただ、病院薬剤師であっても、長く働けば給与は上がっていきます。
厚生労働省の調査によると、病院薬剤師の平均年収は、40代で600万円、50代で700万円と高水準です。
参照元:薬剤師の偏在への対応策 /厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001079647.pdf)
がん専門薬剤師になるには、総合病院やがんセンターのような大規模な病院で、長期間勤務している必要があります。資格を取得後、その資格を活かせる職場で働いていると、勤続年数も長くなり役職も上がるので、必然的に600万〜700万円の高年収となると考えられます。
また、がん専門薬剤師に対して資格手当を支給する職場もあります。
がん専門薬剤師は取得のハードルが高いぶん専門性の高さやスキルが保証されるため、昇進に関しても有利に働き、高年収に結びつきやすいでしょう。
がん専門薬剤師のメリット
ここまでみてきたように、がん専門薬剤師の資格取得は簡単ではありません。
ただ、そのぶん資格を取得するメリットも大きくなっています。
まず、がん薬物療法に関する高度な知識とスキルを持っていることの証明になります。
自信を持って業務にあたることができますし、がん治療のエキスパートとして、医師や他のスタッフから一目置かれる存在となります。
がん医療に関する知識や技術を活かし、薬物療法に関してより良い提案をしたり、薬剤の適切な管理をしたりすることにやりがいを感じることができるでしょう。
「がん患者指導管理料」の点数加算に必要な要件となるため、病院側にとっても重要な人材となります。専門性を評価されて、昇進に結びつくこともあるでしょう。
資格手当の支給や、昇進・昇格により収入アップが見込めます。
さらなるキャリアアップのために、がん専門病院、大学付属病院などのより高度ながん医療を行う医療機関への転職の可能性が広がります。
また、がん専門薬剤師は広告することが可能な資格です。医療機関の対外的な広告に、専門資格を持つ薬剤師の存在を明記することができます。
医療機関の広告内容は、誇大表現などで患者さんを誤認させることを防ぐため、医療法で厳しく規制されています。
がん専門薬剤師は広告可能となった初めての薬剤師資格です。このことからも、がん専門薬剤師の資格への信頼度の高さがわかりますし、その資格を取得している薬剤師への信頼度も高いといえるでしょう。
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まとめ
がん専門薬剤師は、がん薬物療法において重要な役割を果たす専門家です。高度な知識と技術を持ち、患者さんに最適な治療を提供するとともに、医療チームの中でも重要な存在として認められています。
資格取得のハードルは高く、長い時間と努力が必要ですが、専門性の証明、キャリアアップ、収入アップなど、多くのメリットがあります。
がん医療の進歩に貢献したい、より専門的な知識を身につけたいと考える薬剤師にとって、がん専門薬剤師は魅力的なキャリアパスの一つといえるでしょう。
がん専門薬剤師を目指す過程で得られる知識と経験は、薬剤師としての成長に大きく寄与します。また、この資格を持つことで、がん患者さんにより質の高い医療を提供し、社会に貢献することができます。
薬剤師としてのキャリアを考える際に、がん専門薬剤師を検討してみてはいかがでしょうか。
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