薬剤師が海外で働くには…外国で薬剤師として働く方法や成功ポイントを解説
薬剤師さんの中には、薬剤師資格を活かして海外で働いてみたい、海外の医療を学びたい、と考える人もいるのではないでしょうか。
薬剤師資格を活かして海外で働くことは、魅力的な選択肢です。国際的な経験を積み、新しい文化に触れ、キャリアの幅を広げる機会となります。
では、薬剤師の資格を活かして海外で働くことはできるのでしょうか?
この記事では、日本の薬剤師が海外で働くことができるのか、働くためにはどのような準備が必要かについて詳しく解説します。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
薬剤師が海外で働くには
日本の薬剤師が海外で働くためには、いくつかクリアしなければならない条件があります。
ここから詳しくみていきましょう。
現地の国が発行した薬剤師免許
現在はグローバル化が進み、海外で開発された薬がほどなく日本で認可されて使用されることも増えてきました。薬剤師として働くなかで、海外の医療や医薬品の情報を目にしたり、学んだりすることも普通に行われていることでしょう。
しかし、国により医療の状況は違い、認可されている薬にも違いがあります。
医療は国民の健康を支える重要な仕事であるため、日本でも国家試験が必須であるように、薬剤師として働くためには、その国が発行した薬剤師免許が必要です。
日本の薬剤師免許だけでは、基本的にほかの国で薬剤師として働くことはできません。
海外で薬剤師として働くためには、働きたいその国で薬剤師免許を取得する必要があります。
日本の薬剤師国家試験が難関であるように、海外においてもそのハードルは高くなっています。
海外で薬剤師免許を取るにはどうすればいいかについては後述します。
ただ、一定の条件のもとに日本の薬剤師が働ける国もあります。その方法についても後ほど詳しく紹介します。
就労ビザ
日本人が海外で働く場合、ほぼすべての国で就労内容に応じた就労ビザを取得する必要があります。就労ビザは、外国人が合法的に働くために必要な在留資格であり、国によって種類や名称、取得条件が異なります。
薬剤師が海外で働くためには、その国の薬剤師免許に加えて、医療に関連する就労ビザの取得が不可欠です。
ビザの種類や取得条件は国によって異なるため、希望する国の在外公館(大使館・領事館)のホームページなどで最新情報を確認し、必要な条件を満たす必要があります。
書類の準備や申請にも手間や時間がかかるため、しっかり準備しなければなりません。
語学力
海外で薬剤師として働くためには、医療現場で支障なく働くことができるレベルの語学力が不可欠です。これは単に日常会話ができるレベルではなく、以下のような能力が求められます。
- 医療用語を理解し、使用できる。
- 患者さんとのコミュニケーションが円滑に行える。
- 医師や他の医療従事者と専門的な議論ができる。
- その国の言葉で書かれた薬剤情報や医療文献を読解できる。
多くの国では、語学力を証明するためにTOEFLなどの語学試験のスコアが要求されます。また、その国の薬剤師免許取得の過程で、OSCE(客観的臨床能力試験)などを通じて、実践的な語学力が評価されることもあります。
薬剤師が海外で働くハードルは高い
このように、日本の薬剤師が海外で働くハードルはかなり高いものだといえます。
ここからは、そのハードルをクリアするにはどのようなことが必要になるのかについてみていきましょう。
現地の薬剤師免許を取らなければならない
海外で薬剤師として働くための最大の障壁は、現地の薬剤師免許の取得です。
では、海外で現地の薬剤師免許を取るためにはどのようなルートがあるのでしょうか。
せっかく取った日本の薬剤師免許を活かせる国や、活かせる方法はないのでしょうか。
海外で薬剤師免許を取得する方法は主に2つあります:
- 現地の薬科大学に入学し直す
- 外国人薬剤師を対象とした試験に合格し、現地の薬剤師国家試験を受ける
ここからは、それぞれの方法について解説します。
現地の薬科大学に入学し直す
まず、働きたい国の薬科大学に入学するルートです。
基本的には、その国の学生と同様の条件で受験をして、同じように学ぶことになります。
授業や試験が現地の言語で行われるため、高度な語学力が必要です。
国によって、薬学部の年数には違いがあります。
また、アメリカでは、薬学部は大学院扱いのため、学士号を持っていないと入学できません。まず、アメリカの大学に入り、卒業後に試験を受けて大学院に入学することになります。
現地の薬科大学に入学し直して薬剤師になる場合、4年以上の時間がかかります。
また、大学の学費や生活費で、多額の費用がかかります。
大学によっては、海外の学部で取得した単位を認定したり、編入できたりするところもあります。
海外の大学への入学を考える場合は、その国の薬剤師免許取得の難易度や、薬学部の状況についてきちんと調べ、しっかり準備をして臨むようにしましょう。
外国人薬剤師を対象とした試験に合格し、現地の薬剤師国家試験を受ける
もう一度学生からやり直すのではなく、現在持っている薬剤師免許を活かして海外の薬剤師免許を取得するルートもあります。
一見こちらのほうが有利なように見えますが、実際のハードルは高いのが現実です。
こちらの方法で薬剤師免許を取得するには、国によって異なりますが、一般的に以下のようなことが必要になります。
・外国人薬剤師向けの試験に合格する
たとえば、アメリカではFPGEE (Foreign Pharmacy Graduate Equivalency Examination) という試験に合格しなければなりません。
・語学力を証明する
多くの国では、TOEFLやIELTSなどの語学試験で一定以上のスコアを取得する必要があります。
・インターンシップや実務研修を完了する
規定の期間、現地での実務経験を積むことが求められます。
・薬剤師国家試験を受験する
これらの条件をクリアしたあとに、現地の薬剤師国家試験(アメリカの場合はNAPLEX)に合格する必要があります。
こちらのルートを取る場合も、その国の薬剤師国家試験は受験しなければなりません。
また、語学試験のハードルが高かったり、インターンシップ先を探すのが難しかったりする場合もあります。
どちらのルートを選ぶにしても、時間もお金もかかりますし、勉強のハードルも高くなっています。
自分に合った方法は何かをしっかり考えて準備していきましょう。
就労ビザをとることが難しい
薬剤師が海外で働くには、就労ビザの中でも医療に関するものを取得する必要があります。
しかし、どこの国でも、外国人が就労ビザを取得することは簡単なことではありません。
主な理由は以下の通りです。
基本的に、どこの国でも自国民の雇用が優先されます。
そのため、多くの国では、就労ビザを取得するには、高い学歴や専門的な実務経験が要求されます。
また、ビザを申請する先に現地での雇用が決まっていて、その雇用先からの手続きが必要ということが多くなっています。
就労ビザは申請プロセスが複雑ですが、発給の基準が明らかでないこともよくあります。
就労ビザは基本的に更新制であることにも注意しておきましょう。
薬剤師が海外で働くメリット
ここまでみてきたように、薬剤師が海外で働くハードルはかなり高くなっています。
では、このように困難であるにもかかわらず、海外で働きたいと考えるのはなぜなのでしょうか。
ここからは、薬剤師が海外で働くメリットについてみていきます。
国際的な医療の知識が得られる
国によって、医療の状況も違えば、薬剤師の位置づけ、担う仕事も違います。
海外で働くことで、国ごとに異なる医療の仕組みや薬剤師の役割を学ぶことができます。日本で働いているときには気づかなかったことを学ぶことができ、グローバルな視点で医療を捉える能力が養われます。
また、病院や薬局では多様な背景を持つさまざまな患者さんに対応することになります。
異なる文化や制度、宗教、生活スタイルに基づいた医療サービスの提供方法を学べます。
国際的な医療問題や公衆衛生の課題への理解を深めることもできます。
同時に、日本の医療システムを客観的に見直す機会にもなります。
日本とは異なる文化を体験できる
海外で働くことには、仕事面にとどまらない価値があります。
日本ではない国で、日本の当たり前が通じない、異なる価値観や生活様式に触れることで、視野が広がっていきます。
多様な背景をもつ同僚や患者さんとのかかわりを通じて、さまざまなことを学べるでしょう。
日本で働いていると、仕事に慣れれば慣れるほどルーティンワークに陥ってしまうことがあります。
日々いろいろな刺激や発見がある海外で働くことは、個人的な成長や新たな自己発見につながるでしょう。
語学力が身につく
海外で働くことで、日常的な会話から専門的なディスカッションまで、実践的な語学力を身につけることができます。
医療の専門用語を含む高度な言語スキルの習得は、新しいキャリアにつながるかもしれません。
【成功ポイント】それでも薬剤師が海外で働くには?
ここまでみてきたように、海外で薬剤師として働くことはハードルが高くなっています。
それでは、薬剤師が海外で働くのは無理なのでしょうか。
それでも夢を諦めたくない方のために、海外で働くためのいくつかのアプローチを紹介します。
ボランティアとして働く
薬剤師が海外で働ける選択肢のひとつに、医療ボランティアとして活動することがあります。
ボランティアの場合、一定の臨床経験や総合病院での勤務経験があれば参加可能で、現地の薬剤師資格を必要としないことがほとんどです。
青年海外協力隊や国際NGOでは、薬剤師を海外派遣スタッフとして募集しています。
短期間(6ヵ月〜1年程度)の派遣が多くなっています。
ただ、ボランティアなので、活動の場所は基本的に発展途上国となります。
日本のように快適な生活は難しく、生活の面でも医療の面でも厳しいことは多いでしょう。
海外で働きたいという思いのほかに、現地の人々に貢献したいという気持ちが大切です。
アジア圏の日系クリニックで働く
アジアの一部の地域では、日本の薬剤師免許でも働ける国があります。
シンガポールやタイでは、日本の薬剤師免許で働くことが可能です。その場合、働く場所は日系クリニックで、日本人の患者向けのサービスを提供することになります。
働く場所は海外ですが、業務で使う言葉は日本語が中心となるため、言語の障壁が比較的低いのも働きやすいといえます。
ただし、このような求人は限られているので、実際に働くのは難しい面があります。
また、現地の規制や法律の変更により状況が変わる可能性もあるため、最新の情報を常に確認しておく必要があります。
職場で海外研修に参加する
日本国内の職場で働きながら、海外研修の機会を活用する方法もあります。
グローバル化が進む現在では、製薬会社も広く海外と取引をしています。そのような企業では仕事で海外と関わることも多く、海外研修も行われています。
また、社員教育に力を入れている大手調剤薬局や病院にも海外研修プログラムを提供しているところがあります。
企業によって研修の目的や期間は異なりますが、自分で準備することなく海外で薬剤師として学んだり、現地の薬剤師と交流できたりするのはメリットだといえます。
求人に「海外研修あり」と示している企業もあるので、そのような企業で働くことを考えてもよいかもしれません。
薬剤師の転職はこちら
(エムスリーキャリア)
まとめ
薬剤師が海外で働くことは魅力的な選択肢ですが、なかなかハードルは高くなっています。
本当に海外で働こうとする場合、現地の薬剤師免許の取得、就労ビザ、高度な語学力など、必要なことは多くなります。
ただ、本格的に海外で薬剤師として働くことが難しくても、海外でのボランティア活動や職場での海外研修参加などを通して国際経験を積むことは可能です。
このような経験は、医療人としての視野を広げ、自分の人生においてもよい刺激になるでしょう。
この記事を参考に、自分の状況と考えあわせて、海外で働くチャンスをどのようにつかむかについて考えてみてはいかがでしょうか。
ご相談は無料です。転職コンサルタントに相談してみませんか?